12/9〜12/21までにご投稿分の評と感想です。 井嶋りゅう
12/19〜12/21までにご投稿分の評と感想です。
ご投稿された詩は、一生懸命書かれた詩ですので私も一生懸命読ませていただいておりますが、上手に意味を読み取れなかったり疑問を書いたり頓珍漢な感想になったりする場合もございます。申し訳ございませんがそのように感じた場合には深く心に留めず、そんな読み方もあるのだとスルーしていただけると助かります。どうぞ宜しくお願いいたします。
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「膝を病んだシシュポス」積 緋露雪さん
積 緋露雪さんこんばんは。
とっても良かったですね。ギリシャ神話の登場人物になぞらえて、ご自身の膝がどのように病みいかに苦労しているかというのを、巌ならず米袋30キロで表現し、無事に運び終えるまでの動作がとても丁寧で細かくリアリティを持って読む事が出来ました。しかも少しユニークなんです。米袋を運ぶ時の音が「ずっずっ」から「ずっずっずう」と変化しているところ、思わずにやにやしてしまいました。膝がどんどん悲鳴をあげていく過程に鼠が出てきますね。鼠も膝の悲鳴に力を貸してしまっていて、どうしても上がり框に米袋を移動させねばならない事態を迎えてしまいます。悲鳴をあげた膝は最終的に笑ってしまう、ここ、上手いなあ、と思いました。落語の要素も入っていそうですね。そして、構成上とても良かったのが、最後にもう一度シシュポスが登場することと、実は福島産のお米を運んでいて、これまた美味だということ。この詩は、構成も流れも内容もすべて良く、日常の出来事を積 緋露雪さんの個性でもって表現しきっていること、私的には直しはひとつもありません。よって花丸でした。佳作といたします。とっても良かったです。
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「木こりのうた」喜太郎さん
喜太郎さんこんばんは。
この詩は少し不思議であり、難しいですね。まるで木こりの役割を引き継ぐかのように、青年に斧を渡す木こりがいますね。木こりの音が聞こえた者が選ばれた者であるかのように。この木こりと青年の関係性がいまいちよくわからないんです。一軒の小屋というのも意味深なメッセージのように感じるんですが、そのあとは特に何も書かれていないので、木こりの住まいを譲るという意味だったのかもしれません。この詩の雰囲気は好きでした。木こりと青年の関係性、あるいは逆に、青年の日常がもう少し詳しく書かれていたら、今よりもっと入り込めたように感じました。喜太郎さん、今回はすみませんでした。佳作2歩前といたします。また次回お待ちしていますね。
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「空が知っているかもしれない」月乃にこさん
月乃にこさんこんばんは。
考えさせられる詩ですね。よく、あの人と自分の間には見えない壁がある、などという例えがありますが、この詩は本物の壁として、あくまで「壁」について書かれていました。そこがとっても良かったと思いました。本物の壁を描くことによって、例えにある見えない壁がどのように体や心に作用するのか、抱いた感情を上手に表現できていると思いました。なるほどと思いました。
冷たい風が吹きつけます
私は誰に話しかけていますか
などの体感や質問が、とても切なくてやりきれませんね。何となくイジメ問題などが背後にあるようにも読めました。最後にタイトルにもある空が出てきますね。空というのが微妙に引っかかったのですが、これは視覚的なものなのかもしれないと、何回か読んで思いました。自分のまわりを壁が囲んでいるから見えるものは空しかない。風が吹いて雨を降らせる空を見上げて、この壁を築いた者を知っているのは空かもしれないね、と、そのように解釈いたしました。違っていたらすみません。佳作一歩前といたします。
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「透明に関する考察」理蝶さん
理蝶さんこんばんは。
とっても素敵な詩ですね。冒頭の3行、とびきりの3行でした。かっこいいですね。それから7連目「0時になっても消えないヒールを」、ここも素敵ですよね。0時になっても消えないヒールって何だろう、残業をさしているのだろうか?それとも朝までここに居てほしいとの願いなのかな?などと思いながら、どんな意味にせよ、うっとりとする表現でした。タイトルにあるように、まさに透明についての考察が書かれているのですが、この詩自体がとても透明であるように思いました。透明について考え、透明について感じる時、その人自身が透明になっているのかもしれませんね。それを証明するような詩になっていると思いました。各連の表現もそれぞれにうなるほどの良さで、読んでいるこちらも心が洗われていくような気持ちになりました。ありがとうございました。佳作といたします。
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「素敵な途中」妻咲邦香さん
妻咲邦香さんこんばんは。
最近見かけた本で、幸せでいたいなら今すぐしねばいいみたいなタイトルのものがあったのですが、そういえばこの間、私にはすごく幸せな日があって、今ならしんでもいいかなってふと思った日があったんです。幸せを感じたままいけるなあって。この詩のテーマとは違うかもしれませんが「途中でやめるのです」と書かれてあったので、生死も含まれるのではないかと思ったのです。私はこの詩、すごく好きですね。読み手によって色んな「途中」の解釈が出来るので想像が広がりますし、真理を突いているような気がしましたので哲学的でもあるように思いました。しかも途中でやめることが素敵であるというポジティブさも入っていて、広く深い内容のものになっていると思いました。限定しない書き方でとてもお上手だと思いました。佳作といたします。
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「時」エイジさん
エイジさんこんばんは。
サルバドール・ダリの絵がお好きなんですか。私は昔、ダリ展に行ったことがありました。画集もいただいたことがあって、私は記憶の固執に出てくる柔らかな時計が大好きでした。ダリの絵は不思議ですよね。そんな不思議が今回エイジさんの詩に登場しました。ファンタジックな世界に冒頭から包まれていきます。そして少し妖しさも引き連れているような気がします。幻覚あるいは幻想の中で、はるか彼方から時は巡り、過去と現在が混じり合う瞬間を、エイジさんの目の前で繰り広げたかと思うと身体をすり抜けていく。永遠をしられてしまったかのようなラストの決めゼリフ。良かったですね。もう少し、うねうねした世界が描かれていても可でしょうか。佳作といたします。
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「なくしもの1人」紫陽花さん
紫陽花さんこんばんは。
心中お察しします。似たような話をむかし聞いたことありました。高校の同級生から久しぶりに電話がきたので、会ってお茶してると宗教絡みの勧誘の話だった、と。意外とこういう事例は多いのかもしれませんね。それにしても、名前も知らないのにカードを送りつけようなんて、太々しいかたですね。それともノルマがあって追い詰められていたか?いずれにせよ、紫陽花さんをなめんなや(笑顔)
私がこの世を
嫌いにならないカードなら
送っていいよとお返事
紫陽花さんのこのお返事、私は大変気に入りました。かっこいい!ゆうかちゃんがお友達に昇格していなくて良かったです。紫陽花さんは、さらりと共感することを書いてくださって、しかも自己憐憫感がないので、いつも楽しみに読んでおります。今回はおまけ佳作といたします。
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「カレーライス」荒木章太郎さん
荒木章太郎さんこんばんは。
この詩は後半にいくほど切なさがつのっていく良い詩でした。特に3連目が良かったです。じんわりと味わいがありました。ただ、この詩は連が少し単体で存在しているような感じを受けました。せっかく良い詩なのでもったいないと思いました。タイトルが「カレーライス」なので、3連目を基準として、その中に少しずつ2連目や1連目を混ぜ合わせていく、という書き方のほうが、カレーを作りながら思考も一緒に煮込んでいく感じが出るのではないか、と感じました。良かったらご一考ください。とても良い詩でした。佳作一歩前といたします。
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以上、8作品のご投稿でした。
今年も沢山の作品を読ませていただき、どうもありがとうございました。
私事ですが、今年は第一詩集「影」刊行の年で、大変忙しい一年でありましたが、おかげさまでとても多くの詩人さんに詩集を読んでいただくことが出来て感無量です。
現代詩手帖、神奈川新聞、詩人会議、詩と思想、指名手配、潮流詩派など、その他の詩誌やSNSなどでも取り上げていただき、お手紙やメールなど、沢山の有難いお言葉や応援をいただきました。
そして、島さんからはMYDEARのおすすめ詩集として書評を書いていただきました。とても嬉しかったです。島さん、改めまして、その節はどうもありがとうございました。心よりお礼申し上げます。
では、皆さん、良いお年をお迎えください。
来年もどうぞ宜しくお願いいたします。