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スレッドNo.3270

砂時計  荒木章太郎

生活を区切る水平線
破られた日常の境界線
汚れた影を飲み込んだ海
太陽の光で灰色に擦り替える
遠く見えるタンカーの群れは
止まっているようにみたいだけだ
それぞれの海から
運び出された物資を
非日常の先端へと
平等に届けられることなど
空想の域を出ない

現実感を見失わないように
僕は毎朝砂浜を走っていた
かつて実験都市として作られた交差点
今は先端に追い抜かされ寂れていた
立ち止まる訳にもいかず
信号を無視し続けていた

カモメ一羽いない砂浜で
カラス達が
波と共に押し寄せてくる
哀しみで光るガラスやら
コンクリートの破片やらで
圧力をかけて啼いていた

こちらではいつもと
変わらぬ波音に聞こえる
変わり果てた君の姿に
幼き頃書き留めておいた
面影を重ねた
ふるさとは場所ではない
決して戻ることのない時の流れ
打ち寄せる砂を
拾い集めて砂時計にした

毎朝カップスープを作るのに使っている
いつだって実用的だ
亡き母のように日常を作り上げている
道理で理不尽な悲劇に足をすくわれて
ハナレバナレになった
家族といふうつわを取り戻すために
毎朝祈りながらこの砂時計を使っている

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