夜 紫陽花
寂しい寂しいと毎日呟いていると
黒い卵がころんと落ちた
夜はこんな小さな卵から生まれる
一人ぼっちの心は闇を纏い
その闇がこれ以上ないくらい
真っ黒になったとき
滑らかな漆黒の卵になる
卵はひんやりした場所が好きなので
私はいつも冷蔵庫に入れる
冷蔵庫の中で1週間もすると
卵の殻が溶け始める
夜が生まれる
そうっと夜が寂しくないように
両手でなるべく冷えた両手で包む
安心した夜は呼吸を始める
微かな微かな赤ちゃんの寝息のような
私は生まれたての夜を夜の窓辺に置く
夜が夜に溶けていく
昔は夜はなんだか寂しかったけど
今はこうやって私が育てた夜が
時々帰ってきて窓からそうっと入り
一緒に寝ていることがある
本当にそんな日があるので
私は最近夜が待ち遠しくて仕方ない