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スレッドNo.3315

記憶  エイジ

記憶の最も底に
あるものは何だろうかと思い
底まで潜ってみることにした

記憶の中は薄暗く
不思議なことに
水分で埋め尽くされていた
海とはまるで違う
海藻や魚は一切いない

取るに足らない記憶が
現れては消え現れては消え
記憶の中の空間を
潜っていくごと
まるで映画を見るように
その景観を眺めていた

初めての透析
……体に繋がれたいくつかの管
……硬くて真っ白なベッド
救急病院に運ばれたこと
……救急隊員のやり取り
……意外にぼんやりとした母の表情
辛かった数々の仕事
……じりじりと焼けるように暑い現場
……かすかに覚えている同僚の顔
初めて会社に就職した頃のこと
……無数のタバコの吸い殻
……烈火の如く怒る店長の顔……

人生とはこんなにも
苦渋に満ちたものなのかと
思いながら どこかで
幸せを探していた自分

忘れかけていた人たちの顔が
オーバーラップしながら
記憶の断片として
水中に映し出されていった
より昔の記憶が映る
私は記憶をより深く潜っていく

そしてとうとう
一番の深みに着いたようだ
そこで私が見た映像は
雪の中 二人の少女と
私が映っているものだった
生まれて初めての友達と
雪遊びしているところだ
それが一番深くにあった映像

私の目に自然と
涙が溢れ出てくる
そして頭上の一点の光に向かって
私はゆっくり浮上していく
数々の記憶の断片に
別れを告げて
大きく手を振りながら

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