信と不信のはざまで 静間安夫
神よ
長いこと
ご無沙汰していました
でも
それはお互いさま
わたしはと言えば
不義理のしっぱなしで
このところ ずっと
あなたに きちんと向き合いませんでした
あなたの教えに従うなら
周りの人々に誠実でなくてはいけないのに
しばしば不実で傲慢でした
薄っぺらの偽善者に過ぎなかったかもしれません
けれども
不義理のしっぱなし、ということなら
あなたも同じではありませんか?
わたしたちの世界から
ずっと行方知らずだったではありませんか
災厄に満ちたこの世界から
なぜ姿を消しておられたのか?
わたしたちが何よりも
あなたを必要としたこの時代に…
いや、もうやめましょう
お互いの不義理を持ち出すのは
なぜなら
あなたとわたしは
商売の相手ではないのだから
取引きの相手ではないのだから
それに
お互いの義務の不履行があったところで
はい、契約を解消しましょう、縁を切りましょう、
といったわけにはいかない…
お互い、あまりにも因縁があり過ぎます
「今日でお別れしましょう」
「もう二度と会わないことにしましょう」
これまで幾度となく
あなたに別れ話を切り出したけれど
しかし結局
あなたのもとに戻ることを
わたしは繰り返して来たのです
それというのも
わたしたちのこの世界が
いかに悲惨と苦悩に満ちていようとも
荒れ狂う嵐の中に
ほんの時たま覗く青空のもと
最も小さなものたちが
命をつないでいく様を垣間見るたびに
あなたを賛美し
もう一度信じたい、と思う気持ちが
胸の奥底から湧き上がってくるからです
これからも
わたしは
あなたを信じるがゆえに
傷つくことを繰り返すでしょう
永遠に本当に
あなたと向き合うことを願いつつ
片思いと反発の間を
さまよう以外になさそうです