思い出そうよ まるまる
うんと小さい頃の 心配だったこと
いたずらされたり 盗られたり
用心しなくて良いのかな
屋外のエアコンの室外機
夜の果樹園の果物
鍵も壁もない 牛小屋
金目の物は牛小屋にはなく
そもそも牛は とても大きい
コソ泥に大規模農園は適わず
室外機だけでは無用の長物
そうか
なんだかんだで世の中は
正直に過ごすようにできている
お互いさま
納得したところが心地良く
もうすっかり 忘れていた
子どもが大人になるくらい時が過ぎ
現れたのは 室外機泥棒
通電しなくてもお金になる
その考えには 及ばなかった
果物は そっとやって来て
一晩でごっそり持って行かれたし
山を降りてきたやせっぽちの熊が
牛小屋の餌を食べてしまった
起こらない と思ったことが
起こり始めた
そして最後は
戦争
絶対に繰り返してはならないことは
わかっていたはず
それなのに人間は 始めた
あの頃
お互い様で暮らしていた人たちは
どこに行ったのだろう
現実には居なかったのか
それとも 居なくなったのか
どうして居なくなったのか
お互い様では腹は膨れず
お互い様では儲からない
目の前にないことや
初めや終わりだけでない
真ん中の大切な部分
多くの人は それに気付かない
無関係ではないよね きっと
その実 私自身は......
受け継がれない
蓄積 されない
人は誰も お互いの間を
お互いの見えないやり取りで埋めながら
やっと 生きて行けるのに