シャッター 妻咲邦香
閉じていく空に私は何を言ったらよいのか
瞼みたいな雲が垂れ下がり
ついつい微睡んでしまえば
ここで誰かを待ってた気もするし
もう待たなくていい気もする
そうしてお終いにしてしまいたいけれど
どちらを向いても同じ色の風
これ以上歩きたくなかった
次第に閉じていく
ガラガラピシャリと
音も立てずに降りて来る
まぼろしとか夢とか
綺麗
やっぱり
綺麗だ
しょうがない
全部私の色だから
勿体ないから食べてしまおう
誰かが教えてくれた空と
私の知っている空はそっくりなのに
綺麗な容れものに綺麗じゃない心
公平にひとつずつ
でもそれが本当に欲しかったものなのか
今ではうんと怪しい
だから明日よ
あなたは迷いながら来て欲しい
私は此処だよと呼びかけたなら
その時はじめて一歩を踏み出して欲しい
まだ息のある今日の邪魔をどうかしないで
私を信じて待っててくれて欲しい
そして
力なく瞼が閉じられて
終わりのない物語は私の力では
終わらせられないのだと気付いた時に
深々と丁寧に
頭を下げる
本日は閉店いたしました
またのご来店をお待ちしております