早く帰らなくちゃ まるまる
今家に居るのは もう大きくなった息子
私は職場で片付けを急ぐ
仕事の続きは明日にしよう
だって早く帰りたいから
そんなつぶやきに
もう お母さんは居なくて良いでしょ?
明るい声は隣のデスクから
それもわかってる
食べる物はあるし
何も気にせずやりたい放題
見張られないのは最高だよね
ずっとずっと前のこと
お父さんの帰ってくるのは いつも真夜中
子どもたちはもちろん
私でさえ顔を会わせず 過ごした
日曜は 眠らせてあげよう
思いやり
いつの間にか息子は思春期に
家の中で聞こえる声は
私の独り言くらい
前はよく 一緒に笑ったのに
一つ屋根の下
それぞれがそれぞれ
居てくれるだけでほっとする
「家族の本質」みたいなもの
感じ取れなかったんじゃないかな
この先息子が
自分の家を振り返るなら
安らぎはないし
母さんは居なかった
より
安らぎはなかった
でも母さんは 居た
そんな家にしてやりたい
せめて
さあ 急いで帰らなくちゃ
目に見える交流だけが絆ではないけれど