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スレッドNo.3400

祈りの風船  理蝶

高台から街を見下ろすと
あちこちから風船が
気流に乗って
昇ってゆくのが見える

色とりどりの風船に
拙い字や綺麗な字で
祈りの言葉が
書き留められている
大きいものから小さいものまで
一つとして同じものはない

祈りを捧げた時
人は気づかず
その風船を空に飛ばす
切に願う気持ちが
温かな気流を興し
風船を高く高く空へ
運んでゆく

生憎今日は曇り
曇り空の雲は
空に蓋をして
人が空へ飛ばす
沢山の祈りを遮ってしまう

空の底には
雲でつっかえた
この街の祈りが
ひしめき合っている

この街の祈りが
どうか行くべき場所に
届きますように 
僕の頭上から
水色の風船が一つ飛んでいった
ゆっくりと登ってゆき 
雲にコツンとぶつかり止まった

急な風が吹いて
雲間がわずかにできた
柔らかな陽がこぼれてくる
みるみるうちに雲間は広がり
空の蓋にぽっかり青い穴が空いた

遮られていた
沢山の風船は
その穴から
高く高く青い空へ昇ってゆく

色とりどりの祈りが
今空に放たれた
さあゆけ 温かな気流に乗って
行くべき場所まで
届くべき人まで
どこまでも

僕が浮かべた水色の風船は
青い穴をくぐったところで
パチンと割れた

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