寝ない子誰だ 紫陽花
ふくろうは子供が好き
羽音も立てずに夜の森で
子供を探す
ふくろうが住むという
神社の森は昼でも薄暗い
その目の前には
明るい海が広がっている
寄せては返す波の音が
一日中ゆったりと流れ
トンビがピーヒョロロと
鳴きながら大きな羽を広げる
その下の薄暗い森の中
ふくろうは今眠っている
午後4時前幼い私は
おばあちゃんと市場に
夕ご飯の魚を買いに行く
10段ほどの石の階段を
一緒にゆっくり登る
鳥居の前に狛犬さん
左の狛犬さんの奥に
楠の森が静かに広がる
私はそーっと森を覗く
ふくろうがこちらを
見ているような気がして
私はおばあちゃんの手を
ぎゅっと握る
おばあちゃんのおばあちゃんの
そのまたおばあちゃんは
見たという
夜の森で羽を広げると
大人の男の人ほどの
大きなふくろうを
夜暗くなっても
寝ない子をふくろうは
よく見える目で見つけて
さらって行くという
夜寝ない子は美味しいらしい
こんな話を私は
私の子供にひそひそ声で
今晩も話している
寝ない子誰だ