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スレッドNo.3461

天使の息抜き  理蝶

一仕事を終えて
くたびれた翼を羽ばたかせ家に帰る
人間はもっと素直になればいいのに
尻込みしてチャンスを逃すから
俺の仕事が増えるんだ
「偶然の再会」を演出するのも楽じゃない

俺はコップをすっと伸ばして
夜空を掬った
オリオン座の東の空を
神様には内緒で一掬いだけ

もし見つかったらこっぴどく叱られるだろう
星を並べるのはすごく気の張る作業らしいから
気弱な6等星一つ一つにもきちんと場所が
決まっているらしい

俺はバレないように
急いで部屋にもどって
机に夜空の入ったコップを置いた

コップの中の夜空は
黒々とした液体の中に
細かな星の粒子が動き回って
色んな星座ができては崩れ
見ていて飽きなかった

星の粒子達は
重さに従いゆらゆらと沈み始め
溜まりを作って
コップの底でちかちかと瞬いていた

コップを揺らすと
星の粒子は舞い上がり
またしばらくすると
ゆらゆらと底に沈んでいった

ひとしきり眺め終わったら
コップに口を近づけゴクリと一口
そうこれだこれ
夜空の深い甘みは
他の何でも味わえない

底に溜まった星の粒子に味はなく
口に含むとぱちっと弾けて
一瞬強く光る

二つが合わさると甘みと刺激が
同時にやってきて
口の中が賑やかになる
これがなんとも癖になる

俺はあっという間に
夜空を飲み干してしまった
疲れた夜はこうやって
家に夜空を持って帰る
俺の密かな楽しみなのだ

一息ついて
窓の外の空に目をやると
赤い流星が三つ

うわ お呼ばれだ
まずいな 見つかっちまったのかな
なんでもお見通しってか やれやれ困った
俺は急いで窓を開けて
ふっと飛び立った

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