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スレッドNo.3499

感想と評 ◎1月30日(火)~2月1日(木)ご投稿分  滝本政博


一生懸命に読みましたが、見当外れだと感じるところがあればスルーしてください。
よろしくお願いいたします。


「能登に降る雪」 小林大鬼さん  1/30日

被災地の厳しい状況と、それに追い打ちをかける冬の天候を伝え、深い悲しみを訴えます。政府の対応の遅さを嘆いているようにも感じます。
リズムのよい詩で、「る」「まま」の繰り返しがとても効いています。
特に、「雪は降る」の繰り返しは、「る」が絵画(視覚)的要素を感じさせ。雪が舞っているような、効果を上げています。
行分けに難があると感じました。気になったのはこの点のみです。佳作とします。
多分、縦書きに直すとわかりやすいと思うのですが。
以下、私ならこうするという行間の一例です。

雪は降る雪は降る雪は降る
罅割れた能登に雪は降る

元旦のあの日から
能登の時間は止まったまま

瓦礫の道も焼け跡も
深く冷たく罅割れたまま

悲しみの雪は降り積もる


雪は降る雪は降る雪は降る
閉ざされた能登に雪は降る

静まり返る被災地は
置き去りにされたまま

人々の心も距離も
暗く重く閉ざされたまま

悲しみの雪は降り注ぐ


雪は降る雪は降る雪は降る
過ぎ去りし能登に雪は降る

数多の能登の被災者は
片隅に取り残されたまま

過ぎ去りし日々を
思い出せぬまま

悲しみの雪は降りしきる


雪は降る雪は降る雪は降る

希望の兆しは見えぬまま
被災地の声も思いも届かぬまま

懐かしき能登は
記憶の彼方に遠ざかる


「鬩ぎ合ひ」 積 緋露雪さん  1月30日

SNSにおける炎上や、人を自死にまで追いやるヘイトの実態、鬩ぎ合いについての考察です。
冷静な判断を下せる<鳥瞰するもの>がいなくなってしまって、相手を追い詰め冷酷な死にまでおいやる恐怖のシステムが解き明かされます。
当事者同士のせめぎあいが部外者も巻き込み、いつか首謀者不在のまま罵詈雑言が飛びかい、そこに野次馬が加わり、繊細な心の持ち主は自ら命を絶つ。

これは行分けを無視して繋げて読めば一つの散文、論文として読めてしまします。難しい問題ですが、詩とは何かを今一度考えることをお勧めします。詩に向いている仕事と、散文に向いている仕事があります。また書き方によっても詩に接近することができるのではと、思います。入沢康夫さんの言葉に「詩は述べない。詩は問いかけ、詩は求める。詩は探索し、詩は発信する」というのがございます。極端な発言かもしれませんが、参考になればと思います。

最後の一行である
「命短し恋せよ乙女。」
はいいですね。この飛躍があったので、この文章が詩になった、とも言えます。



「手を伸ばしてみたくて」 喜太郎さん  1月30日

片思いの胸苦しさが繊細に綴られています。
「手を伸ばしてみたくて」はいいタイトルですね。
好きな人に話しかける事への逡巡が書かれています。
遠いよ……
と、ためらう。
胸の内を書くことで一遍の詩が出来るのですから、恋は偉大であります。
親しみやすく、誰もが一度は通ったような共感をよぶ作品だと思いますが、
独自の感受力や表現を紛れ込ますことができたら、さらに深みのある作品になったと思います。


「愉快犯」 大杉 司さん  2月1日

最近、世間を騒がせたニュースを題材にしているのかな。
私はテレビを見ないし新聞も読まない(自慢する事ではありませんね)から、このテキストのみでの評価となりますが、いま病室で亡くなろうとしている指名手配犯の心理が上手く描かれていると思いました。類推して書いたのだとしたら、これは才能だと感心しますし、一つの創作物であり、想像力の勝利といえるでしょう。四行一連で進んでゆく記述で状況や犯罪者の現在の心理や作者の考えまでが描かれています。
参考なるのかわかりませんが、小説ではトルーマン・カポーティの「冷血」を筆頭に日本では佐木隆三など、実在の犯罪を徹底的に取材した傑作があります。寡聞にして、日本の詩でそういう形のものがあるのかどうかはしりませんが、書かれたとしたら新分野になるのかもしれません。
犯罪心理をさらに踏み込んで書けていたらと思います。佳作一歩手前とします。


「フィルム ノワール」 鯖詰缶太郎さん  2月1日

ノワールをググってみると、フランス語で黒という意味。 暗黒小説、フィルム・ノワール - 小説、映画の一分野。 人間の悪意や差別、暴力などを描き出している。 闇社会を題材にとった、あるいは犯罪者の視点から書かれたものが多い。とありました。ジャンルとしてのノワールを私達は楽しんできました。
この詩は、ユーモラスで、とても洒落た短詩だと思います。モノローグで書かれるのは、この手の物の常套手段でもありますし、ハードボイルドのパロディのような感触もあります。
詩を読むことは、作者の呼吸、息遣いを感じることです。この詩は改行や語句と語句の間のスペースの使い方がうまくて、そのリズムを楽しめます。
タイトルが「フィルム ノワール」で、書き出しが「雨が強いなあ」ですが、昔の映画はフィルム上映であり、何度も上映され古くなったフィルムは、ザーと傷が映り、画面に雨が降ると言っていたのを思い出しました。今はデジタルなのでそんなことはなく、懐かしい思い出です。



「寝ない子誰だ」  紫陽花さん  2月1日

明るい海と昼でも薄暗い神社の森という、前半の風景描写がよく書けていると思いました。子供であった作者の心理もよく伝わります。薄暗がりの森や神社が森閑としていて、子供は怖くなりおばあちゃんの手をぎゅっと握ります。

三連目は転調部分で一つの秘密が明かされます。
 <おばあちゃんのおばあちゃんの
  そのまたおばあちゃんは
  見たという
  夜の森で羽を広げると
  大人の男の人ほどの
  大きなふくろうを>
とても奇異で怖いイメージです。
 <夜寝ない子は美味しいらしい。>
この行も怖いですね。
夜行性のふくろうの眼が暗闇の中で光っているのを感じます。
民話のような感触です。

四連目も再び転調します。私は夜に自分の子供にこのお話をして寝かしつけています。子供はこういう少し怖いお話が好きだったりしますね。

最終連
 <寝ない子誰だ>
自分の子にだけでなく、子供全般に呼び掛けているようなおもむきで面白いです。
佳作とします。

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