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スレッドNo.3527

評、2/2~2/5、ご投稿分。  島 秀生

ホロコーストの悲劇がある民族だから、ついつい遠慮してしまうんですけど
だからといって、他者に何してもいいっていう理屈には絶対ならないと思うんですよ。
国際社会はもっと真正面から批判すべきと思います。

即時停戦を望みます。


●秋さや香さん「流星群」  

仔細なことを言いますが、スタートを

 十七歳の無力さを覚えているか

という、問いかけにすると、読者側も自分の十七歳を思うことになり、したがい、「共通項としての十七歳」がテーマになってきます。
一方、自分の家族や家庭など、個人的事情に関わることをテーマにして書こうとしてる場合には、

 十七歳の無力さを覚えている

と、問いかけにはしないで、始める必要があります。自分語りの場合は、こっちってことですね。
今回の詩の場合、前者であるので、前者をテーマとしているという認識で読ませてもらいます。

 大人になることも
 子供でいることもできずに

 救うことも
 救われることもできずに

 なにも紡げない白い息

こういった詩行にキーとなる心情やテーマ性を感じて読みました。
まだ世の中に出て何かをなせるわけでもなく、かといって子供にも戻れない。しかしながら、そろそろ将来への意志決定を迫られてる時期ですから、なにかアプローチを始めてるかもしれませんね。しかし世間はそんなに甘くない。焦りが無力感を助長するところがある時期のようにも感じています。
一方で、青春の最も多感な時期でもあります。いろんなことを思うでしょう。あこがれが強い時期でもありますし、逆に傷つきやすい時期でもあります。

2連の「うかつにひらいた手のひら」から始まるこの詩の物語は、私は後者の話のように感じて読みましたが、読者それぞれが想像を巡らせて読んでよいと思います。
あふれる情感は、程よい抽象化が試みられてみて、どの連もキレイです。今回の詩は、洗練された叙情表現が特に続きますね。

 出会わない折り鶴たちが
 横たわる窓辺

 途切れてしまうオルゴールの
 切ない音色を繋ぐように

とりわけ、この2連は好きですね。
終連の1つ前、

 できないことばかり数えていたけれど
 光って消えてしまうだけの星は
 ただそれだけで
 じゅうぶんに美しかった

これは、その時の作者の心を癒したのだろうと思われ、一縷の希望ですね。これが来て終わっているので、少しだけ救いを得て、読み終えられるような気がします。
うむ、ちょっと高度で読むのに時間かかりましたが、名作を。

初連の「一七」を、終連と同じ「十七」で統一する点以外、特に不備はないです。しっかり気合いの入った表現力でした。
まあ、強いていえば、もう一つ、二つ、ヒントが欲しいけどな。


●akkoさん「じゃあ、そろそろ・・」  

本当に我慢強い人ですね。痛いとか、つらいとか、しんどいとか、そういう言葉を聞いた印象がないのが凄いなあーと思う。
あとから思えば、きっと団らん中に「じゃあ、そろそろ・・」と席を立つ時も、自分の体に不調を感じて、自室に引っ込んでたのかもしれませんね。
昔かたぎの人は、医者嫌いだったりするから、定期検診とかも受けてないんでしょうねえ。もう少し早く病巣が見つかると良かったのだけれど、自分からは医者に行かん人だったんでしょうね。

良い思い出ばかりを残して逝かれたんですね。いい旦那さんです。

作品ですが、大事なこと、書かねばならないことを、きちんと選んでピックアップされてるから、内容がぎゅっと詰まってます。
いい詩というのは、どう書いたところでいい詩であるので、このままでも大丈夫なくらいなんですが、ちょっとだけ整理のために微調整しますと、
初連はそのままで、2連以降を、

浅い息遣いの夫に
ごめん、不出来な妻でごめん・・・
と 何度もあやまった。
深夜の見守りを私と交替したばかりの息子が
「お父さん 息していない!」
と 駆け込んできた

団らん中に静かに席を離れるときの夫の口癖が
「じゃあ、そろそろ・・」だった
明けの明星が最後の光を放つころ
一瞬の隙を狙って夫は
「じゃあ、そろそろ・・」と
無言で空へ旅立っていった

春は残酷
我が家の死を受け入れねばならぬむごい春

一輪の真紅のばら
厚ぼったいビロードの花びら
金粉のような花粉を贅沢に撒き散らし
しおれようとしながらも
高貴な香りを最後まで漂わせてくれた
いとおしい いとおしい
真紅のバラよ


こんな感じに整理されてはどうでしょう。
特に気になったのは、2連初行の、

 ごめん、不出来な妻でごめん・・

が、初連の診察中の言葉ではなく、深夜の見守り中にかけていた言葉であることです。
そこは、このようにわかるようにしておきたいと思いました。
ご参考まで。
名作です。紛れもなく、現時点のakkoさんの代表作です。

あまり男性がバラに喩えられることはないんですが、男性が女性に想うバラの花のように、
作者にとっては、夫がバラの花のようだったというのが、この詩の特徴的な部分ですね。詩作品としての個性も備えています。


●上田一眞さん「桔梗の化身」  

おやまあー 凄い褒めっぷりですね。
注釈等、断り書きがありませんので、何かの作品の人物や有名人を想像することは不可能です。この書き方ですと、あくまで作者の身の周りにいる私的な人物を想像して読むしかありませんので、そのことを先にお断りしておきます。

まあ、初連は客観として、
この詩は2連目以降を全部モノローグと読むこともできるのですが、私はなんとなく、2~3連は相手側の言葉で、4連初行でもって作者が呼応し、以下、作者側の言葉というふうに読むことにしました(迷いましたが)。
もしそれで合ってるなら、2~3連の言葉はもうちょっとその人の語り口に合わせてもらった方がいいでしょうね。そこと4連以降の語り口とに差がない点が迷う原因です。

これ、相手側は返事に困るだろうな。終連の初行にも「ため息などつかないで」があり、その様子が伺えますが、これ、マジメに言ったら、相手側が困りそうだ。(まあ、惚れてれば言うかもしれないけど)

これ、相手も困るけど、読者も困りますね。なにしろその相手のビジュアルが読者には全く見えてませんのでね。唯一「楚々とした」の言葉があるので、「楚々とした」雰囲気はあるんだろうなあと思うけど、手がかりはそれぐらい。顔立ちも容姿も着ているものも想像つかない。わからない。読者的には、映像はまだ空気状態なので、空気を相手に、良いとも悪いとも、合ってるとも間違ってるとも、言えないわけで。ああ、そうですか・・・、しか言えない。
それが感想です。

この詩、一見書けてるんですが、アプローチが間違ってる気がします。
現実的に、当事者二人のあいだには情報がいっぱいあるわけですが、読者はその二人についての情報はゼロです。
その状態のままで書いてしまうと、当事者二人のあいだではよくわかる詩になるけれど、読者にはさっぱりわからない詩になるわけです。
この詩は、二人のあいだだけでわかる情報で、書きすぎています。読者への情報提供のフォローがない。
読者には相手の人物像がさっぱり見えてないから、「桔梗の化身でしょう?」と言われても、賛同も共感もできないというのが感想ですね。
漠然と、あまーい雰囲気は伝わってきますけど、それを漠然と感じることぐらいしかできないですね。

例えばね、数編の連作の中に、この詩があるのであれば生きると思います。というのは、他の詩の中に、相手のことを説明してくれる詩が別途であるから、それによって補完されて、この詩も読めるようになるわけです。
ところが補完関係によって成り立ってる詩を、単独で出してきても読めないわけです。
そういう構造を持ってる詩を手本に準じる時は、注意しないど。

一つ提案ですが、たとえば、
徹底的に相手側を書く。相手の容姿、そぶり、発言、作者への対応などを描いて、それから次にその人が桔梗に愛着を示す様子を描いて、(言えば、それら論拠となるものを示してから)作者は、心の中で、(きみこそが桔梗の化身だよ)と、ぽそっと呟く。
そういった展開のほうが、読者的には桔梗に喩える意味がわかって、スッキリすると思います。一つの案ですが。

いずれにせよ、アプローチからやり直してみて下さい。評価保留にします。


●まるまるさん「現実のこと」  

良いことを書いてくれています。
教科書で習ったこと。
未来の教科書で、習うであろうこと。
でも、今も戦争で死んでゆく人はいて、
決して返らないこと。

いい着眼だし、書かれていることもすばらしいです。
ただ、そこまでで終わっちゃいけない、という気がする。

ヒラメキがあって、詩を書きますが、ヒラメキだけ書いたのでは、いい詩にならないんですよね。そこでもう1回考えて、骨組みだけのものに肉づけをする。あるいは膨らませて、当初予定の家より、もう一回り大きな家にする。その、後からの努力が、結構大事なんですよね。詩の後半の作業と言っていい。

たとえば、初連の時の自分の姿。2連での、未来の子供の姿。それらが映像としてあっていい。亡くなる人も人間だが、そこで学んでるのも生身の人間なんです。どちらも人間同士を感じさせる意味でも、そこに人間の姿があっていい。

また、話の思考展開として、もう一つ先の展開を考えてもいい。
たとえば私なら、こういう第3連を設けます。

 きょうも爆弾が降る
 砲が打ち込まれる
 兵士が銃を撃ちまくる

きょう亡くなっていく人たちの具体連です。こういう思考展開例があってもいい。

まるまるさんはベテランさんなので、以上のようなことも考えてほしいのです。期待度高いですから。
いいこと書いてくれてる詩なんですが、完成形まで行ってなくて、「まだ途中」感が強いというのが、この詩の感慨なのです。
きっといい詩になるから、もうちょっと練ってやって下さい。半歩前とします。

それともう一つ気になったのは、
フランス革命も、スターリンの大粛清も、ざくっとで言えば国内ものに思うのですが、複数の国のあいだの戦争でなく、国内ものを選んだ理由が何かあるのでしょうか? 「うんとひどい」例というだけの意だったら、第二次大戦をはじめ、例がもう少し並んでいい気がしました。念のために言いますが、イスラエルとガザは、国内紛争ではありません。


●理蝶さん「天使の息抜き」  

ナルホドー、天使なんですね。

初連の
 一仕事を終えて
 くたびれた翼を羽ばたかせ家に帰る

の翼は、比喩じゃなかったんだと、あとでわかりますね。
サラリーマンが仕事が終わって、ビールを一杯ひっかけるがごとくに書かれてるのが、おもしろいところですね。天使がサラリーマンすぎるところが笑えます。いいユーモアですね。

あと、夜空を掬い取ったあとの、コップの中の模様を描いた表現が、すごくステキだ。眺めてるところの3連ね。ここが一番の読みどころですね。何度読んでも、うっとりするものがあります。
飲んだ時の味覚表現を含め、ここらあたりを丁寧に表現してくれたことが、この詩の魅力になっています。
うむ、よく書けてます。名作あげましょう。
ベストの作とは言いませんが、代表作の仲間入りさせていい作と思います。

終連の「お呼ばれ」だけ、イカンですね。
「お呼ばれ」は、「人から酒食のもてなしに招かれること。」以外に意味がないですから、意味が変わってしまう。これ、たぶん「呼び出し」に丁寧語の「お」をつけたつもりなんでしょうけど、「お呼ばれ」と書くと、意味が変わってしまう。

主人公だけが呼ばれた意か、サラリーマン天使全員が呼び出された意かで書き方が変わると思いますけど、前者なら「呼び出し」、後者なら「非常招集」「緊急集合」くらいで、いいんじゃないでしょうか。そこだけ一考下さい。


●荒木章太郎さん「依存」  

大要は悪くないですねえー
表現は飛躍があってもいいんです。でも、バックとなるロジックは飛躍させないで、丁寧に語ることです。ロジックの方は飛躍させちゃいけません。順に繋がっていかないといけない。そこらあたりですね、課題は。
依存の過ちということでは、この詩は終連がない方が、スジが繋がってていいですね。その方がテーマも大きく感じるし。
終連で、自分個人に落とす時に、話がズレた気がします。

終連削除で、3連を3行ずつ、2つの連に分けるといいですね。
その方がテーマ性がしゃんと見えます。

それと、「人生は短いといふのに」の「いふ」ですが、部分的に旧かなを使うというのは、良い悪いという以前に、国語的な意味で間違いになってくるので、やめたほうがいいです。また、もしもこの部分が引用であるなら、何からの引用か、注釈をつけましょう。

注意点は、以上のようなところです。
あ、でも、表現力は豊かなものをお持ちなので、ロジックと表現が一体となる文体が書ければ、飛躍的に良くなると思います。良いものをお持ちですから、ガンバレば、いいセンいきますよ。
荒木さんは、私は初回なので、以上、感想のみです。

編集・削除(編集済: 2024年02月17日 05:24)

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