悲しみの居場所 紫陽花
「もっと離れて!」レジに並んでると前の初老の男性に、小さく低い声で叱責された
ぽつんと悲しみが生まれた
からだの弱そうな小さな塊は震えてた
私はそんな小さな悲しみを、ポケットに入れて持って帰った
やっぱり忘れっぽい私はそのまま洗濯機に入れた
悲しみはポケットに入ったまま洗濯機で回ったグルグルと
そのうち、悲しみはポケットから出てバラバラになった
散り散りになって、色んな洗濯物にくっついた
これでもかってくっついた
分かってほしくて
忘れてほしくなくて
私は忘れてた悲しみを
洗濯機を開けて思い出した
悲しみは泣き疲れて眠ってしまっている
それを、起こさぬようにそうっと取り出した
小さくバラバラになった悲しみを
私はまた集めて1つにした
何か言いたそうな塊を
朝日の当たる出窓にそっと置く
今は静かな風が吹いている
このまま また、忘れてしまおうか
それとも、引き出しにしまおうか