運命と呼ばれる出来事 理蝶
夕暮れの公園には沢山の人がいる
ベンチに座っている大学生
彼は15分後応募していたバイトに落ちる
出会いとまかないを期待していた彼は
少し落ち込む
彼を落とした駅前の居酒屋
その店は2週間後
集団食中毒を起こし潰れる
店を訪れた36人が体の不調を訴える
電話をしながら公園を抜けるサラリーマン
彼は8日後
駅前の居酒屋に行き食中毒になる
電話先のサラリーマンの妻
彼女は3週間後
通りがかった駅前で
ローカルテレビの取材を受ける
件の居酒屋のニュースだ
サラリーマンの妻が取材を受けている
後ろに映り込んだ女子高生
彼女は10年後
先程バイトに落ちた大学生と
遠くの街で出会い彼と結婚する
少し落ち込んでいる大学生の足元に
ボールが転がってくる
どこからともなく猫が駆け寄って来て
ボールと戯れる
ボールを取りに来た元気な男の子
彼は15年後
産科の医師となり
この大学生の息子を取り上げる
ボールを取り上げられ不機嫌そうな猫
彼女は1時間後
軽自動車に跳ねられて亡くなる
沢山の人が集まり憩うこの公園
この場所は15年後
あのサラリーマンの勤める会社が主導する
再開発計画に巻き込まれ
街から姿を消す
全ては淡く繋がっている
日常の中で人は微かに引かれ合う
良いことも悪いことも
音もなく意味もなく訪れる
人はそれを運命と呼ぶ
それを運命と呼んでしまうところに
人の強かさと哀しさがある