評ですね。2月16日〜19日ご投稿分 雨音
「かいじゅうと十姉妹のうた」荒木章太郎さん
荒木さん、こんにちは。少しづつ春が近づいていますね。
作品、拝見させていただきました。佳作です。
実は「かいじゅうのうた」があるのだろうなと思って色々調べてみたのですが(私は日本のサブカルチャーに疎いんです)はっきりこれだと断定できませんでした。ですから、私の憶測でしかその部分が明白にならないのがとても残念です。一方でどうして十姉妹なんだろう、というのも歌と関連があるのかなと思いましたが、十姉妹という鳥の特性を考えてみると十分に納得できるものでした。怪獣は懐柔でもあり晦渋ですらあるのかもしれないと思っています。
全体的なバランスや構成はとてもよくできていて、しっかりと考えられ組み立てられたものだと感じました。時の流れも明確でしたね。なんといってもその流れの中に静かに組み込まれている心の機微がとてもしみじみと伝わって来ました。最初から最後までとても良かったと思います。
「ゼロ」理蝶さん
理蝶さん、こんにちは。少しお久しぶりですね。
これはとっても素敵な作品ですね。佳作です。
特に、卒業式シーズン、そして、年度末で大きな節目を迎える方も多いこの時期にはぴったりあっていると思います。
ゼロはゼロでも
色んなゼロがあって
長い道のりを経て
目の前にゼロとして現れる
この連に書かれているように、そこまでは色々なゼロが出てきます。読んでいるだけで、色々なことを思い浮かべ、感じられるゼロたち。そして、0ってひとつじゃないんだよっていう優しい囁きのようなものが耳元に届くような気がしました。とても良かったです。
「キュンキュン」喜太郎さん
喜太郎さん、こんにちは。お待たせしました。
今、日曜日ですが、これは日曜日にひだまりで読むのにふさわしいなと感じながら拝見しています。全体として連分けや行分けがもう少しされると、読みやすさ(機能性というんでしょうか)が加わってグッと引き締まると思います。前半だけやってみますので参考にしてみてください。
日曜日の午後
あなたはカーペットに
ゴロンと横になり
YouTubeを観ている
最近ハマっているシリーズがあり
キュンキュンすると言う
昔の恋愛の話を思い出して
あなたのそんな話は
詳しくは知らないし
聞いていないから
嫉妬心は湧いてこない
ただ
キュンキュン
と言うあなたが可笑しい
行分けをしていく上で、意図が伝わりやすいように多少言葉を加えたり、減らしてみました。キュンキュンするってなんだかいいですね。キュンキュンって大切だもん。ときめき、ですよね。佳作二歩手前です。
「色彩喪失」上田一眞さん
上田さん、3月が近づいていますね。お待たせしました。
大作になりましたね。ずいぶんと心を寄せて書かれたのではないでしょうか?そういった部分が節々にありましたし、構成もかなり考えられたのかなと感じています。この作品は上田さんにとって、とても大切な作品だと思います。だからこそ、この作品は佳作もう一息とさせてください。大きく3つに分けられていますが、3つ目の終わり方が少し唐突でした。全体の構成としてはとても良いと思います。何度も読み返し、手を入れていくと、また違う手法にしたくなることもあるかもしれないなともちょっとだけ思っているのですが、犬、が大きな役割を担っていますから、3つ目に犬が出て来てもいいですし、最後にもう一連足して、モノクロームのモノローグ的なものがあってもいいかもしれません。読み返してるうちに、ひらめきがあると思うんです。それが現れるのを待ってあげるのがこの作品には大切かもしれません。待つって少し難しいんですが、それによって生まれてくるものの大きさをきっと感じられると思います。とても良い作品ですし、さらに良さが深まっていくと確信しています。
「本屋さん」埼玉のさっちゃんさん
埼玉のさっちゃんさん、こんにちは。お待たせしました。
本屋さんって本当大切な場所ですよね。本を触るとなんだか嬉しくなりますものね。きっと埼玉のさっちゃんさんの心の中にも、あなただけの本屋さんがあるんだろうななんて思いながら拝見しました。本を読むことをしてこなかった私が/一冊の本に出逢い夢中で読書をしている、の部分がとても心に沁み込みました。最後の一行もとても良いと思います。その部分ですが、一時はひと時とした方がいいかもしれないです。午後一時と読めなくもないので。全体として、3つくらいの連に分けるか、行を少し短くして強弱をつけるととてもよくなると思います。佳作二歩手前で。
「年輪」ベルさん
ベルさん、こんにちは。今年は閏年ですね。なんだか年輪と聞いて思い出しました。
作品、とても素敵でした。なんといっても物語が素敵です。小さな頃に、シワに憧れたっていうのもなんだかすごくユニークでいいなって思いましたし、お相撲さんの額、時があっという間に流れて、親方になった件も自分がすっかり年輪を刻んだことも。それを喜ばしく思っていることも、なんだかとても暖かい思いになりました。
最後の二連ですが、これはお好みなのだけど、私だったらこうするかな。佳作二歩手前です。
全部シワに刻まれている
僕が僕を作る物語
シワと共に生きる
かなしいことも
うれしいことも
言葉には書いてありませんが、全て幸せなんだって伝わってきてしみじみといいなあと。良い作品だと思いました。
「燃える魂」ふわり座さん
ふわり座さん、こんにちは。お待たせしました。
タイトルの通り、熱量がたっぷりとこもった大きな作品だと思います。結構書くのが大変だったんじゃないでしょうか。勢いよく書かれたと思いますが、その後、手を何度も入れたのではないでしょうか?推敲されたことを感じたんです。それで、とても熱い作品なのですが、熱くってさわれないっていうほどではなくて、ちょうどよい熱さ、そう燃える魂としての熱さになっていますね。その点がまずとても良かったです。こういった作品は評価はあまり気にせずに、自分の思いの丈をしっかりと書くことに意義があると思いますが、あえていうのなら、佳作一歩手前です。ヒントとしては、推敲する際に、足すんじゃなくて引くことを考えてみること。もう一つ、熱さ、燃えるに対して、その反対の部分を利用する、ということです。冷たさがあるから熱くなるし、しょっぱさがあるから甘くなる、そういうことですよね。元々の題材に力があるので、強弱を上手く付けることで、読んでいる人をうまくハラハラさせるというのかしら。ずいぶん上級技な気がしますが、どんどん成長されているふわり座さんには取り組んでもらえたらすごくよいと思いますので、あえて今回は書いて見ました。
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評の終わりに
この場所から大きく羽ばたかれる方が増えていて、なんだか胸がいっぱいになります。書き続けるって、結構難しいんです。でも書いていない時間があったとしても、心の中で書いていることってあります。そんな風に自分を感じることが、きっとみなさんあるんじゃないかしら。それは初心者の方でも熟練の方でも同じで、私にとってはそういう一人一人の方のひとつひとつの言葉や想いが、とても尊く感じます。