青炎幻舞 鯖詰缶太郎
青白く ゆれる
炎の周りを
蝶や 毒々しい紋様の蛾
蛍が
競うように 舞っている
まだ 舞姫は来ない
五十年に一度
青白く燃える炎の近くで会おう
と 言った時
あなたは
その美しい 浅黄色の笑顔を
私に見せてくれたのに
あれから だいぶ
歳月が流れ
私も ずいぶん年老いた
初めて
この炎を見た時の
新鮮な鮮明さは 失われ
おぼろげに
そうだな おぼろげに
うつっている
そうか
もう わたしには
じかんが ないのだな
ざんねんだ
おや
ずいぶんと あおい蝶だな
いや みどりいろにも
みえるなあ
いずれにしても
やさしい いろだ
「翁様。ずいぶん懐かしゅうございます。
五十年前にここで会う約束をした
舞妓でございます。
あの日、私は急な病で倒れてしまい
そのまま亡くなってしまいました。
悔しかった、、、。
あなたにお会いするのを楽しみにしておりましたのに、、、。
今夜、ここでお会いできた事、嬉しゅうございます。
翁様。約束を破っておいて言える事ではございませんが、私と踊っていただけませんか?」
翁は目をつぶり 首を重たげに
がくんと頷いた
そしてもう二度と頭をあげる事はなかった
二頭の蝶が 青白い炎の周りを
舞っている
寄り添い ともに
慈しむように 舞っていた