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スレッドNo.3621

孤高の轍  荒木章太郎

父よただいま
貴方が死んで
ますます僕は
貴方に似てくる
困ったものだ
いのちの繋がり
しみじみ感じる
炭化するまで見送ったのち
見知らぬ者の蝋燭と線香の煙と
交ざりあう僧侶は誰に祈っているのか
区別もつかずいつの間にか
僕は父に取って代わった
化石化された遺伝子
紐解いている間に
母はまだ遥か前を歩いていた

僕らは祖父なる帝国の反乱軍
母や妹は祖母の呪いに縛られていた
父を建てて陰にまわるよう躾けられていた
役割の歯車が"とおりゃんせ"を奏でる
やに臭い季節は過ぎた
信号が青に変わると
超高齢の母が横断歩道を駆け抜ける
乳がんを患い乳房を切り取り
胃癌を患い胃袋を切り取り
一度でも人にもたれかかると
生きていけなくなると
孤独の道を駆け抜けていた
全ての人工物から距離を置き
野生の如くと
雑草の如くと
想いとは裏腹に遠回りをしていた

母を旧態依然から解放するため
僕は市役所に連れて行こうと思った
父と同じ轍で道を壊さぬよう
気をつけながら
後ろから母の手を取ろうとしたが
やめることにした

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