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スレッドNo.3624

2/27〜2/29 ご投稿分の感想です。 紗野玲空

諸事情により、評の投稿をお先に失礼致します。
申し訳ありません。

2/27〜2/29にご投稿いただいた作品の感想でございます。
素敵な詩を沢山ありがとうございました。
一所懸命、拝読させていただきました。
しかしながら、作者の意図を読み取れていない部分も多々あるかと存じます。
的外れな感想を述べてしまっているかも知れませんが、詩の味わい方の一つとして、お考えいただけたら幸いです。

******* 

☆「気まぐれ」 喜太郎さま

喜太郎様、こんにちは。御投稿ありがとうございます。
私、喜太郎さんの恋愛詩、とても好きなんです。
ストレートな表現が素敵です。

「気まぐれ」の意味ですが……
1、気が変わりやすいこと。その時々の思いつきや気分で行動すること。また、そのさま。
2、物事の変わりやすいこと。また、そのさま。
となっています。浮気や移り気も同じ意味ですね。
なぜ、意味調べから始めたのかと申しますと、喜太郎さんが「気まぐれ」に当てはめた「気持ちのまぐれ」という言葉が、絶妙に「気まぐれ」と混ざり合い、しっくりと胸の内に収まってしまったから……。
気まぐれが気持ちのまぐれ(まぐれ・偶然による好結果)なんて……うまいことを仰るわ!と感心しながら拝読させていただきました。
エスプリのきいた言葉遊び的要素は、詩の中に生き、成功していると思います。

「気まぐれなあなた」の……気持ちのまぐれに的中した/ハマっただけ/まぐれだったのね

そう思ってしまうのとてもよくわかります。
一緒に時を重ねる内に、気持ちのまぐれでも、気まぐれでもなかったのだと、確信したくなるものですが、
「ハズレばかりがつづいて」まぐれの気まぐれは、「運命の本気」にはならなかったみたい。
「今度はまぐれじゃないサヨナラなんだね」
う〜ん。最後、私も、少し悲しくなってしまいました。

気を取り直して、少しばかり気になった点を上げさせていただきますね。

「だから その後にいくら試しても
 ハズレばかりが続いて」

この辺りをもう少し……たとえば、どんな事を試したのかとか、どんな事がハズレだったのか、などを、詳しく書いていただけたら、もっと、「あなたの気まぐれ」が深く表現されたのではないかしら……と思います。

「まぐれ」「気まぐれ」二つの似た音の言葉を、うまく取り合わせて、揺れる恋心をテンポよく、さらりと読ませてくださいました。

個人的にも深く共感できる佳き作品でした。
ありがとうございました。

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☆「青炎幻舞」 鯖詰缶太郎さま

鯖詰缶太郎様、こんにちは。御投稿ありがとうございます。
一つの良質な短編小説を読んでいるような感じが致しました。

最初に頭に浮かんだのは、速水御舟画伯の「炎舞」です。
(この絵の炎は青白くはありませんが……)
我が身を焦がしながら舞う蝶の群れが怪しい輝きを放つ。光と闇のコントラストに、生と死について深く考えさせられる作品です。
更には、描かれている火炎は青蓮院の不動明王童子像(青不動)の火炎光背を参考としていると考えられており、鯖詰缶太郎さんの詩句「その美しい 浅黄色の笑顔を」や青い蝶の描写などには、この「炎舞」の裏に隠された、青不動に思いを寄せたものが含まれているのではないか……と勝手に想像してしまいました。

もう一点、作品背景として浮かんだのは、周防柳氏著の『八月の青い蝶』です。私は拝読した事はありませんが、ざっとあらすじを記します。

広島で13歳の時に被爆。急性骨髄性白血病となり、最期を自宅で過ごすことになった主人公が、65年を経て思い出した事……
それは昭和20年8月6日朝の事。中学生だった主人公は、初恋の女性と蝶の羽化を一緒に見るはずだったが、その約束は叶えられるはずもなく……。
広島で羽化しかけた愛は、原爆のせいで砕け散った。箱の中に翅の一部が焼け焦げた青い蝶を残して……。

といった内容のようです。
この物語の蝶と、鯖詰缶太郎さんの描くあおい蝶の中に、何となく共通項を見いだせるような心地がして、考え込んでしまいました。
青白い炎は原爆の象徴、或いは、原発かもしれません。そして、その周りを舞う蝶や蛾や蛍は、様々な人間の姿なのでありましょうか。
「五十年に一度」というのはよくわからないのですが、想像を逞しくすれば、原子力による災害はそれくらいのスパンで起こり得る……という警鐘なのでしょうか。
会うはずであった初恋の女性は舞姫、病で今まさに死にゆく主人公を翁と、そんな想像をしながら読んでみました。
「二頭の蝶」…あえて頭した表現の裏に、何か別にヒントがあるのでしょうね。
残念ながら、これ以上はわかりませんでした。

何れにせよ、美しい描写だからこそでしょうか……。
青白い炎は、私には何やら不気味なものに映り、蝶は、飛んで火に入る夏の虫の如く……後先考えず舞い、その場限りの快楽を求め、死の炎の中に身を投じていく人間を象徴しているように感じました。

恐らくは、全く異なる、鯖詰缶太郎さん独自の物語による詩なのであり、それをそのまま受け取るべきだったかも知れません。
既存の作品へのこじつけのようになってしまい、申し訳ないですが、この青炎、舞姫、翁、蝶……青白い怪しげな雰囲気の中描かれた、不思議な世界の意味する処、隠されたメッセージを、それ程強く読み解きたく思った故とお許しくださいませ。

とても美しい物語の詩だと思います。
物語として読ませるだけの詩とするのか、社会批判や問題提起などのメッセージを盛り込んだ上での物語の詩とするのか、メッセージとして訴えるものがあるのならば、もう少し核心をついたものがあってもよかったかもしれません。

読み応えのある素敵な佳き作品でした。
ありがとうございました。

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☆「質問」 大杉司さま

大杉司様、こんにちは。御投稿ありがとうございます。
4行5連できれいにまとめましたね。
型にはめようとすると、私などは無理が生じてしまい、詩句が乱雑になりがちですが、行を形成する言葉の選び方、連毎の主張もはっきり伝わってきて、素晴らしいと思います。

内容は申すまでもなく、仰られている通り……
世界で起こっている事、私達が直面している問題です。

「分かり合う」のは非常に難しく
手を繋ぐことができない

その通りですよね。
ずっと、深く頷きながら拝読させていただきました。
「質問」として敢えてとどめたのも、詩としては一つの着地点だったと思います。

ただ、欲を申し上げるならば、希望か絶望か、意見が分かれる質問を、質問としながらも、大杉さんなりの手法で解き始める処まで読んでみたかった気がします。
現状を描き、嘆く……普遍的な問題の上に、個としての独自の見方を、質問の中に織り交ぜていただけたら、更にぐっと大杉さんらしさが出てくると思います。

忘れてはならない世界に起こっている問題に目を向けさせてくれる、佳き作品でした。
ありがとうございました。

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☆「そうして今はぼんやりとした灰色猫」 紫陽花さま

紫陽花様、こんにちは。御投稿ありがとうございます。
まず、題がとてもいいですね。
そうして今はぼんやりとした……?なんだろう?と思わされます。
そして……私は、紫陽花さんの作品、いつも最後まで読み通せないんです。
何故かと申しますと、途中で必ず泣かされるからです。

それはそれは綺麗な黒い子猫…でも、きっとお腹も黒い、と書かれています。ちょっとクスッとさせられます。
そして、この子猫はお母さんが大好きなのですね。
この立派なお母さん猫、これは紫陽花さん、そして子猫は御子息ですね。

「1歩外に出たらみんな敵だ」……
私は以前、紫陽花さんの「夜を知りたい息子へ」を拝読させていただきました。
故に、この2連以降からは、いよいよ、母猫から見た子猫の描写の細かさ、具体的な描写の中に、紫陽花さんの御子息への愛情の深さを感ぜずにはいられませんでした。胸が詰まりました。

「じっと見られる時間の方が長かったから
 その時間が本当に大事だったから」

子育て中、母親が子供をまっすぐと見つめる視線……。
そう、かけがえのない時間だった……と、私も自分を重ね、涙してしまいました。

やがて、子猫は信条を掲げ、独り立ちの時を迎えますね。
お母さん猫は、ぽいっと子猫を放り出してしまいます。
「思い当たる節があるとすれば……」の連は、あの、夜を知りたがった子猫の言動を指しているのでしょうか。

最終連がまた見事です。
「本当は白猫だった私……」
子猫のために黒くなっていた事がわかります。
そして子猫も……優しい灰色に。
だから、「そうして今はぼんやりとした灰色猫」なのですね。

紫陽花さんは、猫に託した詩が多いように思います。
今回も、母と息子の長い歴史を猫になぞらえ、更にその心情の移り行きを毛色の変化でもって表す……最後の最後、はっとさせられる結末。
素晴らしい作品でした。
最終連の前の連をもう少し整理し、連分けを施したりしたならば、或いはもっと、最終連が生きてくるかも知れません。

今回も、親子の情に溢れた素敵な佳き作品でした。
ありがとうございました。


以上、4作品、御投稿いただき、誠にありがとうございました。
それぞれに、素晴らしい作品で、全て佳き作とさせていただきました。
十分に読み取れていなかった部分も多かったかと存じます。
読み違いはご指摘いただけたら嬉しいです。

私事ですが、誕生日を挟み、評を担当させていただきました。
素敵な詩…プレゼントをいただき、とても嬉しかったです。
同時に、敬愛する井嶋りゅうさんの受賞の知らせ……嬉しくて嬉しくて、素晴らしい誕生日になりました。
ありがとうございました。
明日は桃の節句……花もほころんでまいりました。
健やかな春となりますように祈っております。

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