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スレッドNo.3626

感想と評 2/23~2/26 ご投稿分 三浦志郎  3/2

1 上田一眞さん 「白い装束の人たち」 2/24

僕も何度か見たことあります。最後に見たのは昭和50年、それも東京の某所、繁華な商店が並ぶ通りの片隅に3~4人だったと思う。そうそう、アコーディオンは必ず弾いてた気がする。ある資料によると、戦前・戦中、アコーディオンを弾ける人は男でも意外といたようです。ただし上記の記憶は不確かで、もっと昔に見た記憶と錯綜している可能性があります。
今回、テーマにブレはありません。白い装束の傷痍軍人ひとつです。それを前半は幼少時の体験から話を起こします。伯母に象徴される大人たちは*「三国人」として割り切ります。ただ上田少年は釈然としない。彼らの正義や大義名分を信じてお金をあげます。いっぽうで、飲んで騒ぐ彼らの裏の顔を目撃して幻滅します。お金をストップする。

信じる・同情・お金与える→憐憫・賛同。
疑い・軽蔑・お金ストップ→違和感・反感。

これらは正反対ではありますが、どちらも少年に相応しい純粋と僕は見ます。後半は成熟した大人になり、思考も重層化する。あれを思いこれを思うと、軽々には結論付けられない。年齢のせいか、少し同情のほうに向かうかのようです。その是非はともかく、彼らの胸の内を聞いてみたかったことでしょう。けれども多くの場合、真の答えは時代が持ち去ってしまうものなのでしょう。
「戦争絶対反対!」は多くの人が叫ぶところではありますが、そういった考えと、これら人々を見て感じるところは何処かで何かが少し違う、そんな感慨もわいてきます。人間の難しいところです。詩というかたちで戦争の余韻、その考え方の変遷が伝わります。これは佳作です。戦争周辺の作品群で一定のくくりができそうです。

*「三国人」……背景や文脈で微妙に意味を変えるようです。現在は殆ど死語化しているようですが、使われるとすれば、差別語ではないでしょうが、やや微妙なところでしょうか。本作ではやや卑下した感覚で言われていますが、差別語感覚が緩やかだった時代の、しかもセリフなので問題ないでしょう。

アフターアワーズ。
僕が彼らを見た時の気持ちを順に書いてみます。驚き→不気味→落ち着かない気持ち→同情(かわいそう)。
僕の場合、同情は下位順位でした。とにかく、早くその場から立ち去りたい気持ちでいっぱいだったと思います。
それに比べて、思いを分析して詩にできる上田さんの力に感じ入ったしだいです。


2 静間安夫さん 「聖らかな人」 2/24

前半の思考を受けてそれを覆すような形で、二つのエピソードが提示されます。ひとつ目は、これはたとえ話といった趣きで、なにやら登場人物は神のような風貌をしているように取れなくもありません。その設定が面白く興味を惹くところです。いっぽう、ふたつ目は今も語り継がれる有名で悲惨な事故でした。確か東京・新大久保駅での韓国人男性です。二人とも助かっていたら彼はヒーローになっていたことでしょう。しかし現実は過酷でした。そんなことを思いながら終連に触れると、確かにその人の勇気と人間性の中に神がいたのかもしれません。今も彼の行動と人となりは考えられ続けています。これを個人差で片付けるにはあまりに重い。
神とか聖人の領域に達するかもしれません。佳作を。


3 司 龍之介さん 「散歩中石ころに」 2/26

たまたま歩いていて、ふと目に留まる石ころ。そんな書き出しに好感が持てます。細かい目配り、優しい眼差しです。僕は歩いていて石に感慨を持ったことなど一度もありません。そう考えると、これは凄いです。本来、詩人とはこうでなければいけないのかもしれません。あるいは神が散歩中の司さんの細部に宿ったと言ってもいいでしょう。3連目終わり2行がとても面白いです。
この詩は擬人法を越えて人格を与え自分と同格にまで引き上げている。そして対話を試みようとしています。さらに石の為に自分をも律しようとする。「今日は特別」「今日は君たちのことを~」から読み取れる正直さもかえって清々しいです。甘め佳作を。


4 ベルさん 「花粉よ」 2/26

ごめんなさい、僕、花粉症と全く縁がないんです。が、周囲にこういう人がいるのでお察し申し上げます。「オイラは一ミリも悲しくないぞよ」―この表現が面白い。そう、人が勘違いするほど涙も出るそうです。せっかく寒さもやわらいで、これからいい季節が始まるというのに、辛さも始まり……。この裏腹感もひとつの読みどころです。「四月は残酷きわまる月」(TSエリオット)の言葉ともリンクしそうです。「オイラ」といった人称もこの詩の中でフィーリングを掴んでグッドです。終わり近くの「泣いている」は悲しいというよりは、症状のことでしょう。終連はわずかに心情が掴みにくくなりますが、大勢に影響ないでしょう。甘め佳作を。薬飲んでおだいじに。



評のおわりに。

さて、三月。今年は雛祭りが日曜日になっていい感じ。
お祭りはいくつになっても好ましいもの。
女性のみなさん、おめでとう。 では、また。

編集・削除(編集済: 2024年03月02日 21:12)

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