季節は巡っていない akko
枝から春の芽がぴしぴしと音をたて
メジロは樹に残ったみかんを食べつくし
水仙は降りかかった雪をはらい
みな冬をやり終え、春に向かっている
だが庭のケヤキの枝に一枚だけ残る葉は
裸木の小枝にとどまっている薄茶色の葉は
我が家での最期の入浴となった日の
ガウン姿の心細げなあなた
暗く重い冬をくぐり
雨にも強風にも散り落ちもせず
枝にしがみついて
いまなお頑なに春を拒んでいる
無理はない、無理もない
四月のあの日から
我が家の季節は巡っていないのだから
生きているということ
今生きているということ
あした、アネモネの苗を植えよう