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スレッドNo.3640

夜明けに立つ  理蝶

太陽のアウラが
水平線を揺らし始めるまで
あと数分

冷気は硬度を上げ
体の微細な隙間に詰まり
関節を軋ませる

俺達はダウンのポケットに手を突っ込んで
交互に白い息を吐いている

言葉もなくじっと夜明けを待つ
新しい炎が水平線を越え
空を底から燃やしてゆくのを
俺達は見に来たのだ

孤独な海鳥は
大きな団旗が振られるように
高く弧を描いて飛んでいる

海面が心なしかざわめいている
小さな頭が出ては
俺達を覗いて消えてゆき
水面の下でひそひそと噂する

風は止み音が消える
深く息を吸う

時計を見る
予報の時間だ

水平線の極点から
光の切先が飛んでくる
思わず目を細める

大きな力が新しい炎を押し上げて
強い光が一斉に放射される
海は煌めいてそれに応える
青い絨毯の上に
光の礫が無数に散らばっている

空と海の境から
赤く赤く色づき始める
細かな血管が走るように
龍が火を吹くように
藍の空が赤く染められてゆく

火球はとうとう浮かび上がり
俺達とまっすぐ向かっていた
眠れる世界を叩き起こし
万象を動かす強い力がそこにはあった
俺達はその力を一心に浴びていた

萎れていた内側の何かが
再び熱を帯び始めていた
止まっていた風が動き出し
二人の頬を撫でていった

生きてゆける
何故か そう思った

そこに言葉はなかった
互いの瞳を見て
その思いは確かになった
瞳の中には新しい炎が
いつまでも燃えていた

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