おーい、しっぽ 山雀詩人
夏の夜
歩きながら考えた
「心」はどこにあるのだろう
いざ考えると分からない
心臓だろうか
心という字があるし
英語でもハートと言うし
違う
心臓はあくまで臓器
心じゃない
じゃあ脳か
脳が心か
いや違う
脳はあくまで考える場所
じゃあどこだ
考えたらどこにもない
どこにも心が見つからない
ないのだろうか
そもそも心なんて
あるとばかり思っていたが
捨てたのかもしれない
最初はちゃんとあったのに
悲しみの荷が重すぎて
そうだ
きっとそう
この荒涼たる世で生きるには
そうするしかなかったんだ
トカゲがしっぽを切るように
そうか
心はしっぽ
何度も傷つき傷つけられて
これ以上は僕本体に累が及ぶと
自分で自分を分離した
今頃どこにいるだろう
その辺の道ばたにでも
しょんぼり転がってるんだろうか
おーい、しっぽ
おまえ今どこにいる
世が世なら
ずっと一緒にいたかったよ
心の底から笑ったり
子どもみたいに泣いたり
もっと人に優しくしたり
きれいな花に見とれたり
空想の翼で鳥になったり
涙を紡いで詩を編んだり
したかったよ
人間らしく
生きたかったよ
夏の夜
ブツブツつぶやきながら
不恰好なトカゲが
闇を這う