或る 夏の日の 人生 益山弘太郎
夏が 来た
梅雨も 上がった 曇り空に
眩しい 太陽が 隠れている
そういえば 去年の 夏の始まりも
わたしは この バス停に いた
熊ん蜂が 旋回して いたので 避けて
よけて いたなぁ
この 1年は長かった 様々な事が あったよ
往来する 車も 忙しい
バスが来た 乗車する ひどい 混みよう だ
と なんと
運転席の後ろの一段 高い座席が空いてる
わたしは 躊躇わずに よじ登った
エンジン音が 小刻みに 心地良い
エアコンの送風口を向けた 猛暑に 涼風だ
すると その時 乗車口の 外側から
小学校1年生の 子供達の声が聞こえて来る
「 16時 59分 、です!」
わたしは腕時計を見た 当に 16時 59分 だ
やはりそうだったのか時間は連鎖していた
この子達とわたしの年齢差56 未来人だな
そして そうだ 彼らにとっては この今は
かけがえない1年生 としての 記憶 なんだ
わたしに とっては 初老の 63歳
バスが走り始めた 過去の人生を 置いて
進んで 行く
フロントガラス には
黒と 白と ピンク色 の
アゲハ蝶が 舞っていた