生きている 紫陽花
北向きの部屋に
お花は風に俯いて
お父さんはベッドに横たわる
昔は南向きが好きだった
お父さんは最近薄暗いを
好むようになった
私はそこに同じように
日陰を好むお花を活けた
お父さんは最近
水が上手く飲み込めない
そしてうとうと寝ている
お花はその横でいつのまにやら
花瓶の水を飲み干して
やっぱりつやつやしている
お父さんはよく喋る人だった
今は一日中黙って寝ている
お花も同じように黙って
エアコンの風に時々揺れる
これでいいのだろう
これでいい
お父さんもお花も水だけ飲んで
また自然に帰るその日まで
私はお父さんにもお花にも
頑張って生きてるね
なんて声かけて
枕カバーを替えたり
水を替えたり
お父さんもお花も
同じ部屋で同じ風にあたって
やっぱり今日も静かに生きている