その時に備えている 荒木章太郎
戦争の足音が聞こえる
災害の息遣いが聞こえる
海が揺れていた
足元も揺れていた
大地は何に怒っているのだろう
人身事故で人波は揺れていた
それでもきみに心震わせ
この揺れる想いだけは
恐怖で消し去らぬよう
キャリーバックにつめた
何もしない援助だってあるのだ
想像力を働かせて
助けたい熱意で
人を凍らせぬように
はやる気持ちで
人を突き飛ばさぬように
その時に備えている
環状7号線は助けたい人達で大渋滞だ
チカチカした善意と正義のライトが
眩しくて騒がしくて
届かない物質と食い違う愛憎に
お互いが疲れ果てていた
被害者の役割を押し付けたくはない
加害者の役割に縛られたくはない
僕らはもっと力動的なはずだ
風で作られたセメントを壊すため
幻想で作られた壁を壊すため
僕はきみと旅に出ることにした
愛を育むためにお金を使い寄付をする
あなた方と共に互いの復興を創造する
その時に備えている