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スレッドNo.3709

蟻んこ

超高層ビルの草を潜り抜けていく
ハァハァハァ
ここはどこだ
仲間とはぐれちゃった

一匹の蟻んこは一人ぼっちで彷徨う
高さ十メートルのたんぽぽに助けを求める
おお、たんぽぽさん
僕の仲間達はどこにいますか?

蟻んこはたんぽぽによじ登り
辺りを見回す
どこにもいない 僕の家はどこだ?

綺麗な声で鳴いている雀
上を見上げればどこまでも高い空
大地はひんやりして
どこで終わるのかも分からない

みんなからはおっちょこちょいだと言われ
案の定迷子になってしまった
サボろうと思って少し散策しただけなのに

皆んなは働くのが楽しい楽しいって言って
朝も昼も晩も年がら年中せっせとまあ
僕には無理だね サボってる方が楽しいや

どこからかザクッザクッと大地を震わす音
うおおっ! 人間だ、人間だ!
一人の少年が近づいてくる!
まずい、潰される!!

グシャ……。
死んだ、と思ったけど靴の裏の隙間に見事嵌って
そのまま少年の歩幅で進んでいく

これは良いや
どんどん進んでいくぞ
でも少し怖い

地面が近づいたり遠のいたり
酔いそう おええ、ゲロゲロゲロ
盛大に吐いて蟻んこは少年と共に歩いていく

段差が現れ少年は突然ジャンプする
地面がもの凄い勢いで上下する
これ以上は耐えられない
すぽん 蟻んこは靴の裏の隙間から飛んで
地面に叩きつけられて
そこは小さな穴になっていた

おお、お前、どこに行ってやがった
仲間が目の前で何か言ってくる
目が回ってどうにもこうにも喋れない
どうやらうちに帰れたようだ

上の穴から砂がパラパラと降ってくる
少年が飛んだ勢いで少し穴が崩れてしまった
蟻んこは正気を戻し
人間です! 今人間が上にいます!
しばらくしたら大騒ぎになって
みんな家の中に閉じこもった

蟻んこは人間を連れてきたのは
お前のせいだと責められ
何匹か犠牲も出て
少しの間外出禁止になった

数日後蟻んこは仕事をクビになり
旅人として生きていくことにした
雨の中外に出て巨大な雫が背中を叩きつける
何も悲しくはない
これで自由に生きられる
蟻んこは今日一日の食糧を目指し歩いていく

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