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スレッドNo.3729

螺旋の君   晶子

天地開闢より遥か遠く
君が始めた螺旋の道を
僕たちの喜び悲しみも
僕たちの命も刹那として
君が君になるために歩いて行くのを
螺旋の中の僕たちが
見つめている

紺色のスーツを着た女性が
カフェから背筋を伸ばして駅に向かって行った
バッグには赤地に白の十字の札が揺れてた
彼女の喜び悲しみを僕は知らない

天地が破れて
一つの種族が滅ぶ時
最後に食べた温かいご飯の記憶と
歴史と呼ばれる日々を抱えて
消えていく一人を思う

全ては君の中で
君を孵化させるための準備をしている
そして僕らは君の目

生の嘆きと滅びの静けさの脈動を君は求めたの

誰かの嘆きに呼応して
生まれたこの詩のように
僕らの嘆きに呼応して
君は自分を手に入れる

僕らが魚だった頃を忘れたように
君も僕らを覚えていない
でも確かに君の螺旋の中に
僕らはいて
螺旋の階層を透過して君を見ている

ないものの世界からあるものの世界に転化した意思が
合わないネジを捻じ込まれるネジ穴のように
今も僕らを潰し苦しめる
そしてその熱量が
僕らを生かす

螺旋の君
今朝も太陽が町並みを照らし始めたよ
沢山なのにたった一つの君
光と陰がつくられていくよ
僕らの命を巻き込んでつくられる君
朝食に僕が食べた蜂蜜パンは美味しかったかい
君は僕らだ

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