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スレッドNo.3756

しょっぱいお握り  あこ

心がひび割れて しもやけになっていた頃
君に逢った
君は 父の分も 母の分も 愛してくれた
だから私は 生きて来られた
家庭の味と言う物を私は知らない
いつも肉屋で買った揚げたコロッケかトンカツ
だから君が イビツなお握りを持って来た時
嬉しかった 例えようもなく嬉しかった

泣きながら食べたお握りは しょっぱかった
「塩 きかせすぎたな」君はそう言って笑った
想い出す事は 幾らでもある 次々と湧いてくる
あの頃の時間は 家族を持てなかった私に
神様がくれたプレゼントだったのだろうか
私は 父にも母にも愛されなかったけど 君が全部
まとめて引き受けて 全身全霊で 愛してくれた
心のしもやけはいつか消え去り ひび割れた心は
クッションのように フカフカしてたあの頃
でも そこで時間は止まってしまった
なにもかもそこで 消えてしまった

最初から知らなければよかったのに 知らないままで
ただ寂しい娘でいれば それでよかったのに
家族の温かさを知ってしまった私は 壊れるしか無かった
そうしてそれから何十年 ひび割れた心の私は
それを修復する事も無く ここまで来てしまった
この先も このまま行くのだろう 最後まで 一人で

しょっぱいお握りは 二度と食べる事は無かったのだった

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