歴詩篇「吾妻鏡」 三浦志郎 7/29
武官も
文官も
文字の中で
書面の中で
生きて死んだ
正治二年(1200年)
相模介・平朝臣義澄(年 七十四)
通称・次郎の死が簡潔に記されていた
年の初めに
椀飯(おうばん)の振舞をし
束の間の美しい平穏
最後の輝かしい想い出
殺戮にまみれた鎌倉で
乱にも名は見えず
ましてや闘死でもなく
すぐ隣の過去として
事実だけのその記録は
”畳の上”で死ねたこと
自己の生を全うしたこと
幸福に逝ったことを告げている
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吾妻鏡……鎌倉幕府の公式記録。
椀飯の振舞……宴席に将軍を招待すること。現在の「大盤振る舞い」の語源。