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スレッドNo.3781

感想と評 4/5~4/8 ご投稿分 三浦志郎 4/14

お先に失礼します。


1 晶子さん 「Nuclear」 4/5

この詩は注釈が貴重で有難いことです。調べると、これはオッペンハイマーの伝記映画とのことです。これが無かったら、僕は何のことか、全くわからなかったでしょう。副題にして軽く強化しても可。この独白はオーソドックスに判断すれば、オッペンハイマー自身ということになるのでしょうが、初連~2連は何か核分裂や核融合のようなものを暗示しているようにも僕には取れたのです。
核の詳しいことはわからないのですが―。そして、その解釈で読んでも、この詩は読み通せる、そんな不思議さもありそうです。
ダブルミーニングの詩かもしれない。事の是非を外して書いているのも、この場合、良い方向に働きます。晶子さんにおいては異色作とも言えそうです。で、もうひとつは、なんか、この詩、切ないところがあって、そこがとてもいいんです。ひとつ指摘があるとすれば、この稿の2行目に書いたことが、ここに来て少し気になってきました。注釈に呼応して、少し映画に沿って書かれた部分も欲しかった気はしています。 そうするとサイズも少しちがったものになってくるでしょう。佳作半歩前で。


2 上田 一眞さん 「覆輪舌の野花」 4/6

まず評の手法として、品種に赤丸を付けて調べ(予備知識編)、その骨格を成す詩篇を味わうことにしました(本編)。
まずは導入であり総論的な「エビネ賛歌」です。それ以降はいわば各論。黄色と香りのキエビネ。
ジエビネのジュスティーヌの喩えはふるってますね。ナツエビネの白紫系の覆輪はジエビネの紅系とは好対照をなすようです。鹿児島編ではキリシマエビネとカンランの関係が今一つわかりませんでした。単に品種の違いでしょうかね。「長門峡のエビネ」「絶滅落胆」はいわば番外編と言ったところか。前者はむしろ中也賛歌であり後者は愛好家ならではの愛惜を感じます。
全体を通しての感想です。本作は山歩き愛好家、山野草(エビネ)愛好家には好適な“ガイド詩”であり”図鑑詩“(どちらも造語)である点でしょう。次に、それぞれ一篇として自立できる詩の連合体といった特異な立場を取っている。これ自体で立派な小詩集ができるでしょう。細かく見ると、それぞれの花・場に見合った描写、表現、修辞が成されている点が評価できます。それぞれに土地名が出てきて、花もさることながら、その土地の人文地理を味わうにも適しています。とりわけ「長門峡」の美しさはどうでしょう。「比類なき」といった表現が僕の中で生まれました。好みにもよりますが、前記「図鑑的~」要素と詩的価値は少し別物といった微妙さもこの詩は伝えているように感じることはあります。が、佳作です。

アフターアワーズ。
正直書くと、エビネ、全部同じに見えました(笑)。どんな分野も門外漢とはこんな感じでしょう。そんな中にあって、カンラン、フウラン、トキソウ、サギソウは個性が印象に残りました。サギソウに至っては優美としか言いようがない。余談ですが、花についても島氏はプロ級の知識をお持ちです。


3 荒木章太郎さん 「紅色鯨の種」 4/7

冒頭の2行は何のことか、わかりませんでした。全体としては食文化史と呼ぶべきものでしょうか。
とりわけ発酵食品のことだろうと思います。発酵と腐敗は紙一重のような気もしますが、人間の、あるいは日本人の知恵で菌を上手くコントロールして、紙一重を乗り越えてきた過程でもあるでしょう。そんな風に読めました。なかなか面白いモチーフを持って来られました。2連、3連はよくわからなかったのですが、食物といったところから少し離れて精神性の領域に至っている気はします。
そう考えると、この詩は人間の食物に対する接し方・発展の仕方(過去・現在)を省察し、未来へと繋げて行こうとするのが本旨ではないか、そんな風にも思えるわけです。俯瞰的見地にある作品。佳作を。


4 益山弘太郎さん 「わりきれないJOKER」 4/8 初めてのかたにつき、今回は感想のみ書かせて頂きます。

よろしくお願い致します。
いわゆる「ショートショート」の定義にぴったりするような書きぶりですね。奇想天外ですが、ストーリー性はちゃんと備えています。パロディ要素もある。最後にオチも待っています。

アフターアワーズ。
この書き方は違いますね。掲示板冒頭のお願い「詩行を、1行おきに書くのはやめて下さい。
原稿は正しく書いて下さい」を読んでおいてください。そしてまた書いてみてください。


5 静間安夫さん 「紅白の桜」 4/8

多少、分析的になりますが、事実とフィクションの混合作品と推測しました。会社の事と桜~屋敷と少年と出会ったのも事実。少年にまつわる来歴はフィクションか?もっとも、奇妙な伝聞としての事実ということも視野に入れてもいいでしょう。語り口というか書きぶりになかなかの「圧」があります。先を読みたくさせる文章というか、引き込まれる力を感じました。

3行目までの出だしは軽くさりげなく→次に背景作り→少年の登場(現象描写)→古参社員が語る来歴(奇譚)→最後を飾る作者の思想。

こう見て来ると、ストーリーが自然でツボを得て流れていることに気づきます。歴史的背景も当時のリアルでしょう。そういったことを淡々と書いているのが、かえって怖いです。古参社員に語らせる設定(事実?)も効果が高いです。 フルボリュームの文章にあって、最後の連は単に恐怖では終わらせない何か気高いものがある、そんなエンディングです。 このあたりが静間さんの思想であり詩である所以でしょう。 佳作を。


6 ベルさん 「思い出は」 4/8

「傘寿」(さんじゅ)―八十歳のお祝いだそうです。勉強になります。今年だと1944年(昭和19年)
に生まれた人々です。なるほど、永遠といったラインから見ると少年も傘寿も同列と言えるかもしれません。タイトルに「は」を入れたのはけっこうこだわりがあったのかもしれないです。2連目は思わず遠い目をしたくなるような風情があっていいもんですね。しみじみします。
「おくやみ欄」とあるから相当著名な人かもしれない。以降に続く「昭和歌謡」の人かもしれません。
歌や音楽というのは不思議なもので、自分が生きてきた時代、時代に伴走するものですねえ。
3、 5連はそういった消息を語っている。充分思い出になり、最盛期のモニュメントでもあるわけで
す。ここでは「過去からの手紙です」「心の中のスクラップブック」などが代表しています。
「また今日も私は生きる」―そうですね、今日も生きるから、思い出は思い出たりえるわけですね。 佳作を。



7 森山 遼さん 「信じる」 4/8  初めてのかたなので今回は感想のみ書かせて頂きます。

よろしくお願い致します。
この詩の特色を成しているものに「言葉×3回」があります。これは意図されたことでしょう。
そこに思い入れとリズム感を感じる事が出来ます。ひと口で言うと、孤独、苦悩、逡巡といった雰囲気があり、その背後に僅かな願いや希望の気配を感じてはいるが、それをどのように活かしていいかわからない、そんなイメージで自己の内面を堂々巡りしているの感があります。心の中の具体性のようなもの、その核になるようなものを―はっきり書く必要はありませんが―もう少しシグナルとして出したほうがいいように思いました。様子を見ましょう。また書いてみてください。


評のおわりに。

桜もそろそろピークを過ぎ、散り行く頃。葉の緑が目立ってまいりました。
しかし、いにしえ人は葉桜をも愛でたとか申します。  では、また。

編集・削除(編集済: 2024年04月14日 11:37)

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