幸先のいい朝 温泉郷
駅に着くまでに雨に降られないよう
早めに出た
今年の4月は機嫌が悪く
怒ったような風が吹く
気が重い仕事が待つオフィス
腰もまだ痛い
ジョギングを終えて
ウォーキングに変わった
細身で白髪の何度か見た女性
息を弾ませながら
髪に吹く風を押さえている
すれ違うときに
軽く微笑んでくれた
おお 幸先のいい朝
曇り空の似合う
花崗岩の堅牢な庁舎の裏門から
珍しい空色のゴミ収集車が
建物に傷をつけないように
そろそろ慎重に入っていく
無事に入って門が締まり
制服の守衛さんが颯爽と一礼
うん 幸先のいい朝
街路樹のエンジュの梢は
まだ 芽吹いていない
カエデとケヤキは
「お先に」と芽吹いている
エンジュも目の高さの小枝なら
黄緑色の芽を出している
風に吹かれても小さいから
へへへへへん と どこ吹く風
ふふ 幸先のいい朝
さっきのとは別の
ありふれた青いゴミ収集車が通り過ぎていく
どこかベテラン風の走り方
今日は 水色と青色のゴミ収集車を
2台も見ることができた
うん 幸先のいい朝
雨に間に合って駅に着いた
定期も忘れていない
スマホも忘れていない
リュックの後ろも開いていない
午前7時23分
よし 幸先のいい朝
大丈夫
良い日が始まる