手漕ぎボート cofumi
色なき風が吹く季節になると
誰も来なくなる。
枯れた葉が揺れて
一枚一枚落ちる音さえ聞こえる。
静まり返った湖は
忘れられた人と同じくらい寂しい。
台風で私は流されないように
縛り付けられている。
水面に映る景色は
どうしたって美しくて、
オールでかき混ぜてしまいたいくらい
嫉妬してしまう。
そのうち雪が積もって
私の化粧も剥がれ落ちる。
古くなれば目をかけてはもらえない。
悲しみばかりが積もる。
いつかの若い二人が乗ってきたら、
一番素敵な場所へ誘ってあげる。
それができたら、解体されるのもいい。