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スレッドNo.3816

最期 紫陽花

少し反応が悪くなっていたスマホに
いきなり砂嵐が吹き荒れた
砂嵐は砂嵐らしくつぶつぶの砂を
画面に部屋中に撒き散らしている
そのままその砂嵐は私の
目覚ましの音楽を単調に流しはじめた
ああ誰かが私を呼んでいる
砂嵐の奥から
私を起こすことを仕事にしていた
目覚ましが私を優しく呼んでいる
私の事を覚えていると言いたいのだろうか

義父は 危篤状態になり私を忘れてしまったというのに

先週のこと主治医から
血圧が50を下回ったので
来てくださいと呼ばれ病室に通された
私は義父に呼びかけた
私のこと分かる?
義父は首を横に微かに振る
春休みなので今日は子供も一緒だ
子供の顔を見せながら分かる?
と同じ問いをする
すると義父は
確かに聞こえるか聞こえないかの音で
はあっと言ったのだ

血の繋がりとはこんなものなのだろうか
私には義父の血は入っていない
顔つきやら仕草やら似てないということだ 1ミリも義父ではない
ただ孫はやはりどこか義父なのだろう
私に向けては出ない音を声を
義父は孫の顔を見ながら はあっと出す
お前のことが分かる
そんなメッセージだろう
体重38kgすっかり痩せ細り
見る影もない体から 確かに微かに
意志を持って出た音

そんな事を思い出しながら
私は目の前にある砂嵐の画面から
鳴り続ける私に向けた
目覚ましの音を受け止めている

大丈夫 私はあなたの最期を見届ける

編集・削除(編集済: 2024年04月16日 21:24)

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