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スレッドNo.3849

おぼろづきよ  秋さやか

おぼろづきよに口笛ふけば
雲はほろほろ解けていって
あなたの寝顔を
象ってゆく

歌詞を忘れた子守唄
あなたの夢に届くだろうか

木々はざわめきながら
根元に溜まる月光を吸いあげている

ゆらめく夜の
出口となって
寄るべないものたちを眠らせる
枝先で開かれた羽

その優しい羽ばたきから
こぼれ落ちたわたしは
ただひたすらに
螺旋階段を降りてゆく

乾いた足首が軋むたび
昏い体内で息づく星々
張り巡らされた静脈の分かれ目で
蒼白く光る
祈る言葉の代わりに

吐ききった息を繋いだ風に
靡くカーテンの
緩やかな襞は
月明かりを透かしながら
夢とうつつの波打ち際へと溶けてゆく

変わらない景色
変わらない夜空

けれどたしかに終わってゆく
冷たく滑らかな手すりの
始まりで解かれた
あなたのか細い指先

底に沈んだ夕日を求め
澄んだ足音だけが続いてゆく
明かるすぎず暗すぎない
春の夜を

編集・削除(編集済: 2024年04月27日 12:35)

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