人は偉大であるということ 荻座利守
人は
己自身の悲惨さを
知っているが故に
偉大であるという
ならば人は
世に溢れる悲惨さに
感謝すべきなのだろうか
そんなふうには
誰も思わないだろう
人が感謝すべきなのは
己に降りかかる悲惨さに
堪えうる力を
持っていることだろう
だがその力は
生来のものなのだろうか
人は死者を憶う存在である
と同時に
死者に憶われる存在でもある
という
人が己自身の悲惨さに
堪えうるのは
死者に憶われているから
死者にその力を
与えられているから
なのだと思う
死者を憶い
死者に憶われ
常に死者と共に歩むもの
そうであるが故に
人は偉大であるのだろう