ダイヤル錠 朝霧綾め
ダイヤル錠の
重たい数字
カチカチ回しつづけても
ちっとも指に馴染まない
だってそれは
厳めしく人を寄せ付けずに立っているのが
この子の役目だから
鉄の金具は私の心も
閉ざしまうような気がして
0000のままの暗証番号
私が旅行にこれをつけていくのを見たら
昔の人たちは怒るだろう
そして悲しむだろう
旅が、油断ならないものに
なってしまったことを
思いやりであふれる世界には
まだずっと遠いことを
盗みの手段が
巧妙になったなら
守りをより、堅くするしかないのか
私が落とした定期を拾って
走って追いかけてまで届けてくれる
やさしい人も確かにいたのに
カチリ、と私の鞄を留める
その音で
すべての好意をも、閉ざしてしまった