連休 温泉郷
めんどくさがり屋の君に
僕はいつもごまかされる
ああ トルコ旅行にいきたいなあ
ブルーモスクが見たいなあ
と無理を承知で絶望的に僕がいうと
本を読んでいた君はこういった
ああ いいわね
行きましょう 行きましょう
でも 今は忙しくて無理だなあ
円安でばか高いしなあ
やっぱり あの山の温泉に行こうか
今ならインバウンド客も来ていないよ
と僕がいうと
君はページから眼を上げずにこういった
それも いいわね
行きましょう 行きましょう
でも 腰がまだ少し痛いんだ
あの最後の鎖場は無理かもしれない
やっぱり 手近で悪いけど
公園に行ってのんびりと
カイツブリの親子でも見ようか
と僕がいうと
君はページをめくりながらこういった
それも いいわね
そうしましょう そうしましょう
君はどこでもいいのかい?
と少し怒って僕が聞くと 君はこういった
わたしが行ったことがなくて
あなたも行ったことのない場所に
一緒に行ければどこでもいいの
どこ?
ここ
君は本から眼を上げて
僕の眼をまっすぐに覗きこんだ
君の虹彩が僕の虹彩を見ていた
僕の虹彩も君の虹彩を見ていた
連休が来た
僕たちはトルコに行ったつもりで
公園のベンチで池のカイツブリ親子をみている
いいかい
ここはトルコの公園なんだからね
ケケケケケケと甲高い鳴き声が聞こえてきた
トルコにもカイツブリっているのかな?
と僕がつぶやくと
本から眼を上げないで君はいった
何いってるの
ここはトルコの公園よ
さっきの鳴き声もトルコ語だったでしょ