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スレッドNo.3897

歩く男

ひとりの男が歩く
どこへ向かおうというのか
夕日が沈む先へ歩く
水平線の向こうまで歩く
手には国語と算数の教科書を持っている
男はもう一度勉強したかったのか
 
空っぽのリュックサックには乾いた砂ぼこりが入っている
何十年前に買ったリュックサックなのか
乾いているのは男の心かもしれない 
心の砂漠に水を与えよ

男は一心不乱に歩く 迷いがない
かつかつという音が聞こえてきそうな歩みだ
男は未来へ歩こうとしている
過去の自分と決別するために歩いているのか

男は薄汚れている
シャワーを浴びせて身体を清めてやれ 
汚れているのは心か
心は澄んでいた 表面は汚れているが 中まで浸透していないらしい

男は微笑んでいた
最初は悔しそうな表情で歯をくいしばっていた
今は違う 何が男の笑みを誘発させたのか

風が吹いていた とても柔らかな風が
そよそよと春の森の木陰から吹いてくる風だった
誰が贈ったか知らぬが男は大層うれしそうだった

男が歩いている
猪突猛進に近い歩き
ずんずんという音が聞こえる
これはいけない張り切りすぎである
ふさわしい歩き方がある
もう少しゆっくり落ち着かせねばなるまい

雨を降らせた
小雨程度だ
男は張り切りすぎたせいでだいぶん汗をかいている
汚れていたし暑いようだ 涼しくしてやろう

男の歩みは決して止まらない
常に歩いている
そう心臓が常に動いているのと同じように

男の行く道は穏やかだったり険しかったりする
自然な歩みで乗り越えてゆけたなら……
と安らかなまなざしで歩めば正解である

男を支えるのは二本の足だけだが
手伝ってあげるのは我々の役目だ
男の行く末に 幸あれ

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