落雷のゆくえ 理蝶
大空の消失点にある
青と雲の湧いてくる泉
内側から膨らんでるような
せり出して青く力んだ空
すっと空横切った落雷
彼は夕立の使者で
レイ・コンマの輝きが
人々のまぶたを撫でた数秒後
雷鳴を轟かせ てっぺん杉に落ちた
鋭い葉、太い幹、根の先と
触れるものすべてを焼き尽くして
深く地の奥へ
暗い地の網目に
ほどかれゆく高圧の束
やがて散り散りになって
密かな地下水脈を痺れさせて
何かに触れる事も
何かを愛する時間も
許されなかった刹那のからだ
さみしい、さみしい落雷
定めを恨んだ さみしい落雷よ
天から地まで
あまりにせわしい旅だったろう
燃える電圧を
悠久の沢で冷ましながら
どうか地の底では
豊かな土に包まれて
安らかに消えてゆけますように
思えば
空を揺らしたあの雷鳴も
彼の悲痛な叫びに聞こえて
再び閃光、そして雷鳴
刹那のからだが空を斬る
生き急ぐ恋人たちは固く手を握り
小児病棟の蛍光灯がちらつき
この街にもうじき、夕立が来る