ワニを焼く 荒木章太郎
ワニの口を縛って
カニのようにして
中華鍋で焼いている
町中華に入る夢をみた
赤く染まるワニの背中
キュルルと龍の声で鳴いていた
ヒトが一番残酷だと想いながら
食べる覚悟を決めた
嫌な夢をみた
綺麗さっぱり忘れるために
仕事帰りにエビそばを食べた
会計横の水槽に金魚がいた
金魚は含まない
鑑賞用だから
口に含むものは愛せないから
喰うか喰われるかの状況で
愛することはできるのだろうか
試しに帰宅後ベッドで君を口に含む
愛することができた
最後に金魚を含んでみた
甘い味がした