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スレッドNo.3940

翡翠の季節  理蝶

ハイウェイの後部座席で
短い眠りから覚めたら
この胸を満たした
"翡翠感"とでもいうべき感覚

ほの甘さでも ほろ苦さでも 
恍惚でも 胸騒ぎでも
そのどれでもなく 
そのどれでもあるような感覚

5月はいつも翡翠色
茂り盛る葉の間を ふき抜けるあの風や
ルームミラーの中 静かに在る父の瞳も
みんな翡翠色に見えてくる

5月はいつも突然に
あわただしい4月に隠れ
その身に 燦々の陽をため込んでから
街になだれ込んでくる

5月にしかない えもいわれぬ心地 
つまり"翡翠感"!
夏の芽が肥えてゆくのを
聡く感じ取る さわやかな胸さ

流れるは
80年代を閉じ込めたラジオ
のんきなエフエムが お構いなく喋り

流れるは
神様が雑にちぎって浮かべた雲
陽の端をつかまえて 内側から光っている

まったく人生から壮絶さだけを
抜き取ったようなハイウェイだ
実に冗長で 実に陽気である
僕はまた眠ってしまうだろう
今度はじっくりと深くまで
100キロを越える時速も忘れて

その先で 
午睡の夢が僕を待つだろう
やわらかな夢に
胸の翡翠がとろけてゆくだろう

編集・削除(編集済: 2024年05月14日 22:57)

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