日向ぼっこ 温泉郷
日曜日の朝
母を訪ねる
母は天気がいいと
行儀悪いよ わたしは
といって
パジャマの両足をたくし上げて
床にぺたんと座り
太陽の光を脚に当てる
できるだけ
広い面積に日が当たるように
脚の位置を調整して
ポジションが決まると
パジャマをさらに
太ももまでめくりあげる
以前 それを見たわたしが
行儀悪いよ
と言ったときは
ちょっと恥ずかしそうにしていたが
いまでは
行儀悪いよ わたしは
と言って平気な顔
細くなって皺の増えた脚
もう杖なしでは歩けないのに
光があたると
皺はきれいに消えてしまい
青い血管に血が通い
脚はとたんに若返る
気持ちよさそうだねというと
気持ちいいよ
お日様はありがたいね
と眼を閉じている
眠っているのかいないのか
じっと動かない
医者からもらった
ビタミンDの錠剤は?
しばらくして話しかける
ふふ
飲んでないの
お日様にあたっていれば大丈夫よ
まあ 薬嫌いは仕方がない
こっそり飲まないのも
今に始まったことじゃない
ビタミンDかあ
骨粗鬆症と診断されたとき
しらす干しにたくさん入っていると聞いて
食べさせたことがあったけど
本当はしらす嫌いだしなあと
ぼんやり考えていると
あ しらす干しは買わなくていいからね
お日様にあたっていれば
大丈夫なんだって
こっちの考えを見透かしたように言われると
すこしムッとする
まあ 待ってなよ
ビタミンDの多い食べ物なんて
ほかにいくらでもあるんだからね
わたしも隣に座って
一緒に お日様を見上げる
ぼやっと暖かい
確かにこれは気持ちがいい