水無川 渉様 評のお礼 巣本趣味
この度はご感想をありがとうございます。丁寧に読んでいただき嬉しい限りです。
この詩の土台にある思想を説明しますと、端的に言えばそれは仏教思想です。特に上座部仏教の思想が根底にあります。仏教においていわゆる「悟り」に至るためには「サティ」と「サマーディ」の力を並行して鍛えることが必要であるとされています。この詩に込めた思想は主に、前者の「サティ」です。これはパーリ語で、日本語に訳すと「気づき」とか「注意して見る」とか「物事を心に留めておくこと」などの意味になります。すべての行末を「注意せよ」としたのにはこの意味があります。
また、仏教における悟りの定義は「『無常』『無我』『苦』を理解すること」とされています。この「苦」には、「四苦」が含まれます。「四苦」とは「生の苦しみ」「老いの苦しみ」「病の苦しみ」「死の苦しみ」の四つであり、この詩の四連はそれぞれこの順に対応させたつもりです。
私は、芸術の面白さは解釈が一意に定まらないところだと思います。芸術と科学は同根だと思いますけれども、この芸術の特徴は基本的に答え乃至解釈が一意に(特に数学に於いては顕著に)定まる科学とは対照的であり、それこそが大きな魅力であると考えています。
水無川様の評、たいへん興味深く拝読いたしました。題が作品全体に対するイロニーであるという解釈は、この詩を鑑賞して頂いた方には初めて頂いたご感想で、驚きとともに温かな嬉しさを覚えました。
この詩は私の処女作です。これからも詩作に励んでいこうと改めて思いました。この度は誠にありがとうございました。