みょうがの詩(うた) 上田一眞
こんなにも小さきものなのに
芳醇な味の夏野菜
みょうがは風味豊かな大人の味
素麺や蕎麦に彩りを添える
大事な脇役だ
面白い野菜だ みょうがは
人が食べるのは
葉っぱでも 根っこでも 実でもなく
花芽なんだ
花が咲く前の 蕾
いくら美味しいからと言って
蕾を食べるなんて
神を恐れぬ所業だね
みょうがを食べるとイン◯になる
たくさん食べられたら
困るから
こんな神話があるんだ
あの独特の味は
麻薬的だから
上手くイン◯神話にマッチしたのかも
みょうがは意外にも
綺麗な花を咲かせる
たった一日の
花の命のために懸命に咲く
細くて弱々しい白い花
まさに処女のごとき花だ
幼い頃
おばあちゃんちの竹笹で囲った狭い畑で
小さな筍のように
にょきにょき出ているみょうがを
土を払い
摘むのはとても愉しかった
兄妹で
花のついたみょうがを競うように掘った
でも食べた記憶はまるでない
スーパーでパック入りのみょうがを見つけた
胡瓜といっしょに一夜漬にしてみるか
きっと美味しいぞ
調理してたら記憶の彼方にある
おばあちゃんの顔が浮かんで来た
おしゃべり兎は
みょうがを食べすぎて
鳴き声を失った
みょうがが余りに美味しいので
兎は
夢中になって
神様の分まで食べてしまった
神様の逆鱗に触れて舌を抜かれ
声を奪われた
おばあちゃん曰く バチがあたった
いやあ おばあちゃんの貴重な喩え話だ
僕も
食べすぎて失語症にならないよう
気をつけよう
くわばら
くわばら