ひるむ あこ
病院の待合室に 一人の20代くらいの女性が立っていた
長い前髪が顔の半分に垂れ下がり
アレでは物も見難いだろうに・・と 思った
思った瞬間 ドアーが開き瞬時に風が吹きこんだ
彼女の前髪は風で舞い上がった
あれは そう エレファントマンという映画だっけ
彼女の顔半分はまさにそれだった・・・・
瞬間的に私はひるんで 顔を逸らしてしまった
逸らしながら自分が腹立たしく 情けなく
意を決して もう一度視線をあげ
今度はしっかり彼女と目をあわせ
かすかに微笑して 会釈した
彼女はじっと
そう私には5分にも10分にも思えるほどの長い時間
私の顔を 凝視した
そして・・・・
プイッと 顔を逸らした
もう2度と 私を見なかった
多分もう2度とない
ひとつの人生との遭遇と 別れ
そして自分の日々は又
同じように何もなかったように 繰り返されていく
それでも きっと
あの前の自分と
あの後の自分と
どこかが確実に 変わる
変わらなければならない
ほんの一瞬の
見知らぬ他人との ただ1度の偶然の遭遇でも
積み重ねられていく日々が ある