国道、真空、午前2時 理蝶
深夜の国道を 家まで走らせる
爬虫類のケージに付いていそうな
あやしいオレンジの街灯
下に横たわる 黒蛇のような国道
時折 コンビニがある
人も車もない 息が鋭くなる深夜
コンビニの 白過ぎるあかりは
なんだか神聖にすら見える
信号が何個も続いて青だっただけで
泣きそうになって これは不味いと思う
街に迎えられているような気がした
「よく帰ってきた 帰って早くお眠り」
そんな声が聞こえた気がした
こんな夜は
カーステレオから歌詞がよく聞こえる
萎れたこころは 聞き飽きた歌にも
真剣に救いを求めるらしい
鼻で笑えていたことが いま痛くて仕方ない
痛むべきことなど何も被っていないのに
つまりは
僕の弱さに巻きつく神経叢の
過剰な震えさ
あぁ、国道よ とぐろを巻け!
僕と車と 都合の良い青信号とを
ぐるぐると閉じ込めてしまえ!
無限に連なる 青信号に誘われて
とぐろの奥へ 迷い込んでしまいたい
団欒と孤独の間の真空で
喘ぐだけの日常なんて もう帰りたくない
帰って眠れば 明日が来る
目が覚めれば 血が冷める
降りる勇気すらないものは
ただ運ばれてゆく
感情の戦地へ 深夜のセンチへ
どうして
人は同じところばかり怪我をするのだろう
それでもどうして
人の痛みはいつも新しいのだろう
信号は青 家路を急かすようにさえ思えて
なあお前だけは純粋に
僕を迎えていてほしい
お前を日常の刺客だなんて
思いたくはない
信号にすら 縋る者には
溺れるほどの安らぎを 与えよ
どうやら神の法に
そんな文言はないようだ