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スレッドNo.4034

つかの間の雑居  温泉郷

暴風と大雨が
深夜から明け方まで続き
翌日は快晴
歩道もほとんど乾きあがったが
その真ん中に
小さな水たまりが残った

そこには
ユリノキの枯れた大きな葉
ケヤキとナワシログミの小さな葉
カレーパンの袋
デパートの小さい紙袋が
吹き寄せられ
半ば浮き半ば沈んで
とどめられている

ユリノキは長く続く大通りの
街路樹のどれかから来たはずだ
葉の面積が広いので
いったん落ちてしまうと
脱出が難しかったようだ

ケヤキとナワシログミは
公園から飛ばされて来たのだろう
1キロ以上は飛んできた
仲間の葉と一緒に飛んできて
入射角度深く水に突っ込んだ葉だけが
沈んで取り残されたのだろう

カレーパンの袋は
食べ歩きの若者に無造作に捨てられて
あちこち飛ばされ 転がされ
風が弱まったところで
この水たまりに落ち着いたのだろうか

紙袋は有名店のもので
何かの高級品が入っていたらしい
ゴミ箱が倒れて散乱して
吹き上げられて飛んできたのか

初夏の陽を浴びて
徐々に乾いていく水たまりの中の
つかの間の
気まずく 落ち着かない雑居
偶然と必然の暫定的均衡点

どうせここは最後の場所ではない
乾いて風に吹かれるか
足蹴にされて転がされていくか
拾われてゴミ箱に捨てられるか
でも まあ
それまでは このままだ

次の偶然と必然まで
半ば沈み半ば浮きながら
水たまりの中で
つかの間の雑居を
みんな 静かに受け入れている

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