こころ 静間安夫
こころは
外から見えないから
周りの人は
本人の苦しみに
気づかないけれど
でも
耐えられないほど
つらいことがあったり
ひどいショックを受けたりすれば
こころだって血を流すし
骨折もし
脱臼もする
だから
そんなときには
腕や足と同じように
リハビリをし
ゆっくりと時間をかけて
大切に労わって
回復させてやらないといけない
それでも
ときには
こころを引き裂かれるような
大きな怪我をすることだってある
こころの一番大切な部分ー
そう、周りの世界への信頼を
切断されてしまうことだってある
そんな
取り返しのつかない
過酷な体験をした人は
いったいどうやって
こころを取り戻したらよいのだろう?
同じように
身体の大事なところを
なくしてしまった
パラアスリートが
苦しい葛藤を経て
やがてたどり着いたような
新たな生きがいや目標を
見つけることができるだろうか?
その道筋は
果てしなく遠いかもしれない
でも
パラアスリートが
観客を魅了するのは
そのパフォーマンスだけではないー
遥かな険しい道のりを
乗り越えてきた内面のドラマが
競技の場に臨むその選手を
輝かしているからだ
痛々しく傷ついた
こころを持った人も
書いたり、描いたり、作曲したり、
奥底からの叫びと
苦悩を表現していくうちに
自己を癒し
断ち切られた世界との絆を
回復できるよすがを
見つけられるに違いない
内面の深いところから
発する表現が
わたしたちを感動させ
まさにそのことが
表現する人にとって
生きがいになるだろう
古今の優れた芸術家の多くが
こころと精神に
傷を受けた人たちであることは
決して偶然ではない