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スレッドNo.4042

傍観者のうた  荒木章太郎

パブロフ博士の時代から
流行った行進曲の背中を
巡回バスは規則正しく
労働者を乗せて走る

この街で叩き込まれた
オペレーションと
この体に叩き込まれた
旧態依然の体質を
毎日この血に循環させて
条件反射で生きてきた
時代の風向きが変わったというのに
自由の顔をした支配者の前で
思考も行動も更新できない

情報化したブルドーザーが
知性を薙ぎ倒してゆく
海や山や森を下敷きにして
建設された超高層ビル
記号化された天の川に架ける
巨大な橋のプロジェクト

名もなき欲望は抑圧され
大地に詰め込む人柱
圧縮させて爆発させて
移り変わってゆく景色を
頬杖ついて車窓から眺めていた

自然と無意識が
無意識と肉体が
肉体と人工が
自然と意識が
意識と肉体が
自然と人工とが
交わる錯覚を味わっていた
(こんな事業に加担していたのか)

罪を薄めてでも生き延びるため
あくまでも正当化する俺の肉体
深緑に寝かしつけておいた反骨を覚えているか
この仕事を辞める前に掘り起こしてみるか

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